欧州へ渡ったシュミット・ダニエルの本心 海外移籍は「行きたいという一心だった」

飯尾篤史

今夏、ベルギーのSTVVに移籍を果たしたシュミット・ダニエル 【飯尾篤史】

 身長197センチの高身長を誇り、足もとの技術も高い世界規格のGK、シュミット・ダニエルが今夏、念願の欧州移籍を実現させた。新天地は日本サッカーのヨーロッパにおける拠点となりつつあるベルギーのシント=トロイデンVV(以下STVV)だ。この日本サッカーの未来を担うGKを現地で直撃し、新しいクラブや街の印象、そして古巣であるベガルタ仙台への想いなどに耳を傾けた。

海外志向が膨らんだのは「代表に選出されるようになって」

――23歳の頃、「26歳までに日本代表に選ばれる」という誓いを立てて、それを昨年、実現しました。海外でプレーするという目標を立てたのは、日本代表に選ばれるようになってからですか?

 そうですね。昔から海外でプレーしたいという気持ちはあったんですけれど、大きく膨らんだのは、代表に選ばれるようになってからです。代表に行くと、みんなから海外のレベルの高さを聞くし、彼ら自身の意識もすごく高い。それで、早く海外に行かないといけない、って本気で思うようになって。危機感みたいな感じです。

――では、STVVから念願のオファーが届いたとき、すごくうれしかったのでは?

 うれしかったんですけれど、ホッとした気持ちのほうが大きかったですね。実は、オファーをいただくかなり前から、興味を持ってくれている、という話を聞いていたんですよ。でも、そこから正式なオファーに至るまでが長かった。ちょっと不安だったので、やっとだな、よかったなって。

――STVVの立石敬之CEOからは、どんな話を?

 立さんからは「試合に出られる保証はないし、簡単なチャレンジではないけれど、日本のGKのレベルアップのために必要なステップだと思う」と言われましたね。僕自身もそう思ったし。あとは……あまり覚えていないです(笑)。とにかく、僕自身が、行きたい行きたいという一心だったので。

――たしかに第1GKのケニー・ステッペは昨シーズン、ビッグセーブで何度もチームを救っています。高い壁であることは間違いない。

 それも分かったうえで来ました。自分はその壁を越えなきゃいけないし、決して不可能じゃないと思います。いつチャンスが来るか分からないので、それを生かせるように、しっかり準備をしたいですね。

「将来を考えチャンスを逃したくなかった」

仙台の成績が芳しくない中、副キャプテンながらシーズン途中でチームを離れる決断となった 【(C)J.LEAGUE】

――今回の移籍について、事前に誰かに相談は?

 いや、していないですね。僕が行きたくて仕方がなかったので。

――では、奥さんに対しても?

 妻とはいろいろと話しましたけれど、それも相談っていう感じじゃないですね。なんだろう……報告かな(笑)。妻も、僕が海外に行きたいのは知っていましたし。「今、こんな感じ」「ついにオファーが来たよ」「じゃあ、行くわ」みたいな(笑)。

――ベガルタ仙台の渡邉晋監督からは?

 ナベさんには背中を押してもらいました。去年、仙台から西村拓真がCSKAモスクワに移籍したんですけれど、彼の話を持ち出して、「野心のある選手、次のステップを踏もうとしている選手を引きとめたりはしなから、頑張って来い」と。

 ただ、(7月13日の)鹿島(アントラーズ)戦まで出場することが決まっていたので、「そこまでは仙台の選手として仕事をまっとうしてくれ」と言われましたね。

――今季、仙台の成績が芳しくない中で、シーズン途中で移籍することに対して、申しわけない気持ちもあったそうですね。

 本当に申しわけない気持ちでいっぱいでしたね。自分の勝手でシーズン途中でチームを離れるわけですから。今年は副キャプテンに指名してもらい、何試合かキャプテンマークまで巻かせてもらったのに。ただ、自分の将来を考えたらこのチャンスを逃したくなかった。夏になってチームの調子が上向きになったのは、救いでした。

――GKだけの責任ではないけれど、今季は一時最下位に沈んでしまった。メンタル的に難しかったのでは?

 本当にそうでしたね。正直、どうしたらいいのか分からない、そんな感情になった時期もありました。でも、ナベさんが、「もっと要求し合ってやっていこう」と呼びかけたり、みんなも懸命に取り組んで、練習の雰囲気を少しでも良くしようとしていた。それで、少しずつ結果が付いてくるようになって。

 苦しいときに何かを変えようとしても簡単には変わらないんですけれど、それでも諦めず、変えようとする姿勢が大事。そのことを学びましたね。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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