連載:レアル・マドリー・カスティージャの「真実」

マドリーが「育成力」でバルサを逆転 久保が“乗り換えた”理由もそこに――

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このアセンシオやセバジョス、さらには久保と、近年は若手逸材の争奪戦でことごとくバルサに勝利しているマドリー。リクルート活動における自由度の高さも“勝因”だろう 【Getty Images】

 ほんの数年前まで、若手の育成と言えばバルセロナのラ・マシア(下部組織の総称)だった。リオネル・メッシをはじめ、彼らは優秀な人材を次々と輩出してきた。ところが近年、状況は大きく変わり、マドリーが「育成力」でライバルを逆転した感がある。おそらく、バルサのカンテラで幼少期を過ごした久保建英も、両クラブの現状を比較してマドリーを移籍先に決めたに違いない。ではなぜ、こうした逆転現象は起こったのか。現地記者が解説する。

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リクルート活動で自由度が高いマドリー

「ラ・ファブリカ(=工場の意味)」ことレアル・マドリーのカンテラと、「ラ・マシア(=カタルーニャ地方の農家の意味)」ことバルセロナのカンテラは、スペインはもとより世界でもトップレベルの育成機関だ。

 ともに最高級のタレントを養成する一流のノウハウを持ち、共通点は少なくないが、一方でもちろん相違点もある。その「違い」において最も分かりやすいのが、志向するサッカースタイルの違いだ。バルサはパスをつなぐサッカーが伝統として定着しており、入団する選手たちは何を差し置いてもバルサ流のスタイルに適応する必要がある。

 一方のマドリーは試合に勝つことを最重要視し、そのアプローチについては個人の能力と裁量に委ねられる部分が多い。したがって、リクルート活動においてもマドリーのほうが自由度は高く、優秀な選手と判断すれば、プレースタイル云々にかかわらず手に入れる。

 以前は両クラブとも、金の卵を国内外問わずに獲得していた。しかし近年、FIFA(国際サッカー連盟)が18歳未満の国際移籍を厳しく規制するようになったため、例えば未成年者の両親にスペイン国内で何らかの仕事を斡旋し、家族ごと移住させるような“抜け道”も閉ざされてしまった。その分、国内選手の争奪戦がヒートアップしている側面があり、時に保有元のクラブの反感を買うような強引な手法が講じられることもある(著者・注/スペインでプロ契約を結べるのは16歳以上の選手。したがって16歳未満の選手の移籍に際して、保有元のクラブが見返りに金銭的補償を受け取ることはできない)。

 そうした国内の未成年選手獲得の際に“ホームグラウンド”となるのは、マドリーの場合がマドリー州、バルサの場合がカタルーニャ州だ。それぞれアトレティコ・マドリー、エスパニョールと、国内屈指のカンテラを有するライバルクラブが立ちはだかるが、スペインの2大巨頭はスカウト網を広範囲に張り巡らせながら、さまざまなクラブと業務提携。逸材を優先的に獲得する権利を享受する一方で、提携クラブには退団した選手を譲渡することで共存共栄を図ってきた。

 しかしながら近年、そんな両クラブの育成面に明確な優劣が生まれつつあるのだ。
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