アーティスティックSの新星・吉田萌 射止めた「シンデレラガール」の座

沢田聡子

ジャパンオープンで語った思い

吉田(写真右)は4月のジャパンオープン前に並々ならぬ意気込みを語っていた 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 今年4月に東京で開催されたジャパンオープン。日本代表デュエットの選手として大会前日の記者会見に臨んだ吉田は、囲み取材で「ここでの勝負が世界選手権につながると思うので、すごく大事な大会になるんじゃないかなと思います」と意気込みを語った。

「さっき(記者会見で)座っていた人達[非五輪種目・ミックスデュエットの選手を除く、蔣婷婷(ジャン・ティンティン/中国)、蔣文文(ジャン・ウェンウェン/中国)、乾、スベトラーナ・ロマーシナ(ロシア)、スベトラーナ・コレスニチェンコ(ロシア)、オナ・カルボネル(スペイン)]はみんな五輪を経験している、そして全員メダリストの方達。私はまだ五輪の舞台にすら行ったことがないので、どんなふうになるのか正直想像はつかないですが、とにかく目の前の練習、一日一日を乗り越えきゃいけないなと思っています」

 日本代表デュエットとしての自覚に満ちた、初々しくも真っすぐなコメントだった。

世界水泳でメダルを取って、東京へ

ジャパンオープンのデュエット・フリールーティン、乾・吉田組は中国ペアを上回る2位に食い込んだ。今月の世界水泳、そして来年の東京五輪でも好成績を期待したいところだ 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 ジャパンオープンは日本選手権を兼ねた国内最高峰の大会であると同時に、17年より「国際水泳連盟ワールドシリーズ」となっている。今年のジャパンオープンは世界トップに君臨するロシアが参加し、来年に迫った東京五輪に向け各国の意識の高まりを感じる試合となった。また7月の世界水泳選手権ではぜひとも表彰台に乗り、東京五輪でのメダルにつなげたい日本にとって、大事な意味を持つ国内開催の国際大会でもあった。「私はロシアの選手が出る大会に出るのは初めてですが、同じ大会で泳げると何か得るものはあると思う」と語った吉田にとっても、貴重な経験となったはずだ。

 同大会のデュエット・フリールーティンで、乾・吉田組は昨年のアジア大会で敗れた蔣文文・婷婷組(中国、ジャパンオープンには所属クラブから出場)を上回り、吉田は「去年は中国に勝とうと思ってアジア大会に挑んで勝てなくて、今回リベンジできて良かったです」と手応えを語っている。

 その後、5月のカナダオープンで中国の黄雪辰、孫文雁組(中国、リオデジャネイロ五輪銀メダリスト)に敗れていることもあり、乾・吉田組が7月の世界選手権で表彰台に乗れるかどうかは予断を許さない。しかし吉田は、井村ヘッドコーチとともに日本代表の黄金時代を築いた金子正子元シンクロ委員長も「しなやかで、(ジャッジに対して)好感度がある」と評する得難い個性を持つ。

 世界と戦える美しい足と豊かな音感、フレッシュな勢いを武器に、「メダルを取って、東京につなげたい」と意気込む吉田萌は、初の大舞台に臨む。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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