コパ・アメリカ2019連載

ブラジル人指導者は森保Jをどう見た? 軒並み厳しい評価も…中島、久保は好印象

大野美夏

カカやオスカルの育成に関わったブラジル人指導者に、日本代表選手について話を聞いた 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 コパ・アメリカに出場していたサッカー日本代表は、グループステージ第3戦のエクアドル戦に引き分け、2分け1敗の勝ち点2の3位で、グループステージ敗退となった。

 日本戦3試合を現地ブラジルの指導者はどう見たのだろうか? 現ブラジル代表のカゼミーロやガブリエル・ジェズスを発掘し育てた指導者、ブルーノ・ペトリ氏に、気になった日本代表メンバーの印象を聞いた。厳しいコメントが並ぶ中、中島翔哉と久保建英は高評価だった。

川島は「日本を救った」

GK大迫敬介
相手のクロスに対しての反応が非常に良かった。(第1戦チリ戦の)失点に関しては仕方がなかったが、大きなセーブもなかった。

GK川島永嗣
さすがベテラン。落ち着いて、要所要所をきっちり決める。何度か重要なセーブで日本を救った。

DF杉岡大暉
チリ戦では良い守備も、攻撃への絡みもなく、特筆すべきことがなかった。守備はそこそこ。これに攻撃への切り替えの技があればなお良し。

DF板倉滉
背が高く守備的な面は良いが、マークだけでなく、もっと攻撃への切り替えに貢献すべき。後ろに引きすぎ攻守に距離を作ることに。もっと独自の発想を持ってプレーすべき。

DF植田直通
最終ラインの相手のマークに問題あり。プレーに俊敏性が欠け、チリのスピードある攻撃陣を自由にさせる場面が多く見られた。ハイボールの処理は良い反面、低いボール扱いには難あり。

DF原輝綺
(チリ戦では)4バックの右SBとして、あまり良いプレーはできなかった。簡単に敵に抜かれていた。オーバーラップしてクロスを上げるなど攻撃の積極性は乏しく、一度しかクロスを上げるに至らず。SBとして力不足感が否めなかった。

DF冨安健洋
スピードとテクニックがあり、守備のセンスはあるが、マークに弱さを感じた。ボールを奪った後の攻撃への処理に難あり。ハイボールへの反応は良いが、ウルグアイの攻撃陣を止めるには至らず。

DF岩田智輝
攻守に大いに貢献していたが、スタミナ切れか、次第に足が遅くなり、相手にやられるようになってしまった。

久保は「非凡さを感じさせる」

MF中山雄太
中盤でのマークは良い。だが、スピードがないため、チリ選手を追いかける形になった。攻撃への貢献も少なかった。

MF柴崎岳
攻守の切り替えのキーマン。テクニックはあるが、そのテクニックを攻撃に生かしきれていない。もっと積極的にエリアまで行くべき。ゲーム観察力があり、視野が広い良い選手だ。しかし、もう少し攻撃に加わってチャンスを作るべき。

MF中島翔哉
素晴らしいテクニックの持ち主。だが、個人技に走りボール離れが良くなかった。もっとパス力を使い、周囲の選手との連係をすべき。すごいアビリティーの持ち主で、スピード感も良いが、時々ボールを持ちすぎる傾向が見られた。ポジション的に彼をもっと生かすことができるシステムがあるのではないかと思う。

MF三好康児
テクニック、スピードと強みを持ち、(ウルグアイ戦で)2点を決めた。要所要所に姿を現すポジショニングが良かった。

MF安部裕葵
目立ったところがなかった。

MF久保建英
才能をプレーの端々に感じた。しかし、経験の浅さからか、自分1人で解決しようと焦りが見られた。もっと組織的にプレーしたら、彼の良さや強みがもっと生かされる。攻撃時の動きはすばらしい。高い技術力を持っており、パスセンスが非常に光る。エクアドル戦で少なくとも3回は、味方の攻撃陣に最高のパスを出した。非凡さを感じさせる。

上田は「怖さが感じられない」

FW前田大然
両サイドを使ってよく走った。何かをやろうという意欲は見られたが、無駄な労力を使いすぎに見えた。走るだけでは、解決しない。もったいないことに生産性の無さを感じた。(エクアドル戦では)日本を勝利に導く絶好機がありながら、2度とも決定力不足で決めきれなかった。シュートの精度が低く、ゴールゲッターとしては力不足。

FW上田綺世
日本の得点チャンスに何度か絡んだが、得点感覚は優れていない。ボールがゴールの枠に入る気がしなかった。フィニッシュに難あり。相手の選手から見ると、怖さが感じられない。

FW岡崎慎司
スピードがあり、ボールの取り合いもうまい。動きも良く、積極的に自分からボールをもらいチャンスを作るが、決定力不足。

ブルーノ・ペトリ氏

サンパウロFC、パルメイラス、フルミネンセなどで、育成部監督としてカカ、オスカル、エルナーネス、ルーカスなどを育てた実績を持つ。サンパウロFCのU15チームをクラブ世界一に輝いたことも。現ブラジル代表では、カゼミーロとガブリエル・ジェズスの恩師。現在は、ジュベントス、ナシオナルの育成部コーディネーターであり、また個別にパーソナルコーチングも引き受ける。若手選手の才能を見極め、良いところを伸ばし、足りないところを強化する。テクニックを磨けば世界に通用する選手になると、選手を育てる。親身になって選手の心に寄り添うことのできる人格者でもある。
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著者プロフィール

ブラジル・サンパウロ在住。サッカー専門誌やスポーツ総合誌などで執筆、翻訳に携わり、スポーツ新聞の通信員も務める。ブラジルのサッカー情報を日本に届けるべく、精力的に取材活動を行っている。特に最近は選手育成に注目している。忘れられない思い出は、2002年W杯でのブラジル優勝の瞬間と1999年リベルタドーレス杯決勝戦、ゴール横でパルメイラスの優勝の瞬間に立ち会ったこと。著書に「彼らのルーツ、 ブラジル・アルゼンチンのサッカー選手の少年時代」(実業之日本社/藤坂ガルシア千鶴氏との共著)がある。

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