- ダブドリ編集長 大柴壮平
- 2019年6月20日(木) 18:05
ラプターズが初優勝を飾ったファイナルの興奮も覚めやらぬ中、現地時間6月20日(日本時間21日)にはオフシーズン最大のイベント、NBAドラフトが開催される。今年はNCAA(全米大学体育協会)トーナメントでも活躍、日本人初のドラフト1巡目指名が確実視されているゴンザガ大・八村塁のおかげで、例年になく日本での注目度も高い。そこで、これまでNBAドラフトに触れてこなかった人たちへ向けて、今回はその仕組みを解説したい。
部分ウェーバー制を採用しているNBA

ドラフトと言えば、日本プロ野球を思い浮かべる人も多いだろう。NBAドラフトは、日本プロ野球と同様、部分的にウエーバーとなるウエーバー制を採用しているものの、その仕組みが違う。日本プロ野球の場合は、1巡目のみ各球団が希望の選手に入札、希望選手が重複した場合にくじ引きを行う。2巡目以降は前年の成績下位が優先的に指名するウエーバー制に切り替わる。

NBAの部分ウエーバー制は、1巡目1位から4位までの指名権を、前年にプレーオフ進出を逃した14チームによるロッタリー(抽選)で決定する。ただし、ロッタリーのオッズは14チーム均等ではなく、前年の成績によって細かく設定されている(【表1】に1位指名権のオッズを表記)。ロッタリーで決まるのは4位指名までで、それ以降は下位チームから優先的に指名していくウエーバー制が採用される。
今年から1位指名権の確率を変更

なお、完全ウエーバー制とは、前年度の成績下位の球団から順に、希望の新人を指名できる制度だ。完全ウエーバー制には、新人の獲得に球団がマネーゲームを繰り広げるのを阻止でき、さらに成績下位のチームに優秀な新人が入ることでリーグの勢力均衡を図れるメリットがある。では、なぜ、NBAは完全ウエーバー制ではなく部分ウエーバー制を採用しているのか?
これには理由がある。完全ウエーバー制を採用した場合、前年の黒星の数がドラフトでの高順位指名を担保するが、この仕組みを逆手にとって翌年のドラフトのためにわざと負ける球団が出てくる可能性があるからだ。これはタンキングと言われ、部分ウエーバー制を採用しているNBAでも実際に行う球団が散見された。この事態を受けて、今年NBAはロッタリーのオッズをより平坦にすることで、わざと負けることで得る恩恵を減らそうと試みた。
【表1】を見ると、今年のロッタリーでは昨シーズン最下位のニューヨーク・ニックスが1位指名権を手に入れる確率は14%だったが、実は昨年までは25%という設定だった。オッズ変更の結果、今年のロッタリーは【表2】の通り成績の順と指名の順が必ずしも一致しない結果となった。これで来年以降、無闇にタンキングに走るチームが減るかもしれない。