日本馬史上初の米クラシック制覇の偉業へ マスターフェンサーを勝利に導く2つの鍵

JRA-VAN

2016年3着ラニとの比較からも期待は大きい

日本調教馬史上初の偉業を目指すマスターフェンサー、前走ケンタッキーダービーの内容からも期待は大きい 【Photo by Getty Images】

 日本調教馬による史上初の米クラシック制覇という大偉業を視界に入れ、マスターフェンサーがベルモントステークスに挑む。2016年にケンタッキーダービー9着だったラニは、このレースで見せ場たっぷりの3着と奮闘したが、マスターフェンサーはケンタッキーダービーで勝ち馬に肉薄する6着と激走。その比較からも快挙への期待は大きい。

 ケンタッキーダービーは不安定な天候に見舞われ、水が浮く不良馬場での争いとなったが、ベルモントパーク競馬場があるニューヨーク州エルモントは週中から週末まで雨の予報もなく、良馬場での施行となりそうだ。こうした馬場状態の変化がマスターフェンサーにとって一つ目の鍵となるだろう。

 ベルモントパーク競馬場のダートコースは「The Big Sandy」の異名を取り、米国内でも砂の質感が強めと言われている。マスターフェンサー陣営からも、より日本のダートに近いという感触が伝えられており、それが走りやすさに直結するなら心強い。ただ、オープン勝ちのない日本の実績からも、慣れているとはいえ適している保証はないのが現実だ。ケンタッキーダービーのような不良馬場の方が合っているのだとしたら、直線で見せた末脚の威力が弱まる可能性も捨てきれない。

 二つ目の鍵はやはり距離延長になるが、これは各馬が未経験だけに条件はイーブン。父ジャスタウェイが天皇賞・秋とドバイターフを圧勝しているため、血統的なイメージでは2000mあたりが適距離の印象もあるが、同じジャスタウェイ産駒のヴェロックスは日本ダービーで3着。息の長い末脚はマスターフェンサーにも通じるものがあり、距離をこなしてくれるものと期待できる。

現地の前売り1番人気はKダービー3着の良血タシトゥス

 現地の前売りで1番人気に推されているのはケンタッキーダービー3着のタシトゥス。重賞2勝をはじめ実績十分なうえ、父タピットは最近5年で3頭のベルモントS優勝馬を輩出し、母(クローズハッチズ)も現役時代にチャンピオン牝馬に輝くなど死角は少ない。ケンタッキーダービーでは後方追走から早々にステッキが入る苦しい追走に見えたが、最後まで力強い脚勢を保ち良血馬ならではの闘志を感じさせた。当時は初体験の不良馬場が合わなかった可能性もあり、良馬場で変わり身を見せた場合は一段と手強い相手になる。

 タピット産駒はタシトゥスの他にもバーボンウォーとイントレピッドハートが控えている。両馬ともベルモントSで複数回の優勝を誇る名手を配しており、騎手の腕が物を言う長距離レースなら人気以上の激走に警戒も必要だろう。また、スピンオフはイントレピッドハートと同じT.プレッチャー調教師の管理馬だが、同師は毎年のように複数出しで実績を築いてきたベルモントSマスター。こちらは血統的に距離延長が課題となるものの、名伯楽の采配がいかなる結果を生むか興味深い。

二冠目の覇者ウォーオブウィルは展開次第

米クラシックの二冠目・プリークネスSの勝ち馬ウォーオブウィルは距離不安もマイペース先行なら怖い 【Photo by Getty Images】

 二冠目のプリークネスステークスを制したウォーオブウィルも、血統的に距離延長は歓迎と言えないタイプ。三冠を目指した名馬たちでも、血統に不安があるタイプは、直線で見る間に失速して涙を飲んだ例が少なくない。ウォーオブウィルはスムーズに先行できればしぶといだけに、ここはいかにペースを守れるか。幸いにもプリークネスSで2着のエバーファストや、前哨戦(ピーターパンステークス)2着のサーウィンストンらも含め、末脚勝負型の多い相手関係になった。出方が気になるのはタックスと格下のジョービアの2頭くらいなので、マイペースを貫ければ二冠達成も可能だろう。
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