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日野レッドドルフィンズの巨大ビジョン
「ラグビー×企業貢献×地域戦略」

提供:(公財)日本ラグビーフットボール協会

 公益財団法人港区スポーツふれあい文化健康財団と、公益財団法人日本ラグビーフットボール協会が主催する「みなとスポーツフォーラム 2019年ラグビーワールドカップに向けて」の第92回が3月27日、東京都港区で行われた。


 今回は『日野レッドドルフィンズが目指す「ラグビー×企業貢献×地域戦略」』というテーマのもと、日野レッドドルフィンズGM兼監督の細谷直氏を招き、ラグビージャーナリスト・村上晃一さんの進行で講演が行われた。

堀江獲得は「最高の補強」

日野レッドドルフィンズGM兼監督の細谷直氏
日野レッドドルフィンズGM兼監督の細谷直氏【スポーツナビ】

 この日は本題に入る前に、講演当日に発表された日野レッドドルフィンズの新加入選手、堀江恭佑(元ヤマハ発動機ジュビロ)に話が及んだ。


 堀江は細谷氏がヘッドコーチを務めていた時分の明治大学ラグビー部出身。卒業後の進路について相談を受けており、2012年当時の堀江は、ラグビースクールに通っていた時からの縁がある地元の東芝ブレイブルーパスと、就任2年目の清宮克幸監督(当時)からの熱心な誘いを受けていたヤマハの2チームで迷っていたという。


 細谷氏は悩む堀江に「チームの中で揉まれてレギュラーを取って日本代表に行くか、1年目から対戦チームに揉まれて日本代表に行くか。どっちの道を選ぶ?」と声をかける。堀江は「後者の道を選びます」と答え、ヤマハへの入団を決めた。


 トップリーグ加入後は右肩上がりで成績を上げるチームの中心選手として活躍、日本代表キャップを数えるようにまでなった。「清宮監督が辞めてなかったら多分ステイ(残留)だったでしょう。彼はそういう男ですよ」と細谷氏。トップリーグ残留を果たした日野の新シーズンに向けて「最高の補強です」と期待は大きい。

15年で各チームの総年俸は5〜7倍に

 日野はトップリーグ昇格初年だった昨季、入れ替え戦に勝利し最低限の成績とも言える残留を果たした。下部リーグであるトップイーストリーグからトップリーグへの定着を図る途上のチームだけに、細谷氏は即戦力大学生の獲得にはまだ苦労していると明かした。そんなチームに代表キャップを持つ堀江が加入したのは、チームのビジョンに共感してくれたからだと言う。そのビジョンは今後の有望選手獲得の大きな後押しとなりそうだ。講演はここから本題に入る。


 指導者としてNEC、明治大学で優勝実績を重ねた細谷氏が14年、次なる舞台として選んだのがトップイーストリーグの下位をさまよっていた日野自動車レッドドルフィンズ(当時)だった。細谷氏は現状のラグビー界について「価値の転換」が必要だと訴える。


「今はどのチームもコストアウトばかりなんです。03年にスタートしたトップリーグですが、オンザピッチで起用できる外国人選手は2名、日本人のプロ選手はほぼ皆無だった当時と比較し、約15年間で各チームの所属選手の総年俸は5〜7倍近くに膨れ上がっています。もちろん、インターナショナルレベルの外国人選手がトップリーグに加入したことで、日本ラグビーのレベルが飛躍的に伸びたことも事実です。ただ一方で、急激に増え続けていく人件費をはじめ、ラグビー部にかける経費が限界を超えている企業もある。だからこそ仕組みをどんどん変えて、ラグビーが企業にとっての経営資源になるように、チームの価値を変えていかないといけない。


 レッドドルフィンズは後発のチームなので、トップリーグに定着して勝っていくために、僕なりのストーリービジョンを会社に提案しました。そのひとつに、世界の舞台で活躍する一流のラガーマンを輩出し、ラグビーを通じて世界で活躍した経験を生かして、引退後に世界のマーケットで活躍する将来の日野自動車を牽引していく人財を育成していくことです。」


 そのために細谷氏が重視しているのが地域や会社との一体感だ。かつて指揮していたチームでもチーム名に地域名を入れるよう何度も提案したが、通らなかったという。しかしレッドドルフィンズには日野自動車の「日野」が入っている。そのうえ18年には「自動車」を外し、トップリーグ初の企業名を使用しないチームとなった。


 また会社との距離を縮めるのに「意外と大きい」と語るのが、選手が本社勤務であることだ。


「日野の社員選手は全員本社で勤務しています。恐らくトップリーグでは日野だけではないでしょうか。廊下を歩いていると役員や社員に肩をたたかれながら『ナイスゲームだったな。次の試合も応援しているぞ』と言われる環境って、日々の積み重ねで大事だと思いました。強くなれば会社や社員から愛され、支持されやすいだろうと。現場は強くすることに集中できる。グラウンド外の環境も相乗効果として良くなっていっていると感じています」

企業に、地域に貢献する新ビジョン

「トップリーグ定着4年後4強入り」を目指す日野だが、新たなビジョンはそれだけではない
「トップリーグ定着4年後4強入り」を目指す日野だが、新たなビジョンはそれだけではない【写真は共同】

 細谷氏は就任から5年でのトップリーグ昇格を目指していたが、4年でそれを達成。昇格後の昨オフには次なるビジョンを社長に提案した。そのひとつが「トップリーグ定着4年後4強入り」。過去のデータから、昇格チームの実に半分は翌年降格の憂き目にあっている。そこで社長に練習時間の確保などサポートを訴えた。


 もうひとつ、肝として掲げるのが「ラグビー×企業貢献×地域戦略」――。日野自動車は「豊かで住みよい持続可能な社会の実現」を目指し、環境負荷の低減や自動運転の実用化などに取り組んでいる。また国は年齢や障がいの有無にかかわらず安心してくらせる「共生社会」の実現を掲げている。これらの大きな目標に対して、スポーツの力でも「誰もが豊かで住みやすい、安心安全な社会の実現に貢献できる」と考える細谷氏。Jリーグなど多くのクラブが提唱するような、幅広い世代の人たちが様々な目的で活用する地域に根差した「総合型スポーツクラブ」としての進化も視野に入れている。「日野の社員の方や地域の方々など多くの人が「Team Hino」を結成するきっかけとしてラグビーが存在するんです。主役はラグビーじゃない。だからわれわれは新たな領域でチャレンジしていかなければなりません」

カンタベリークルセイダーズとのパートナーシップで描く夢

クルセイダーズとの連携など、細谷氏は「夢」を着実に具現化している
クルセイダーズとの連携など、細谷氏は「夢」を着実に具現化している【スポーツナビ】

 未来へ向けたビジョンだけでなく、細谷氏はラグビーの現場においても精力的に強化を進めている。今年2月にはスーパーラグビー2連覇中で今季も首位をひた走るカンタベリークルセイダーズとのパートナーシップ契約の締結が発表された。


「われわれはクルセイダーズとのパートナーシップの締結によりチーム強化はもちろん、マーケティングなどのチーム運営のノウハウも学ぶことができるんです。スーパーラグビーのゲームもクルセイダーズのスタッフと一緒に見られるし、当然練習やミーティングにも参加できる。クルセイダーズのゲームプランやメソッド、練習映像、練習資料、ホームゲームの企画やチケット販売などのチーム運営全般のノウハウを学びながら、それを日野バージョンにカスタマイズしているところです。」


 スーパーラグビーのオフ期間中にはクルセイダーズの指導陣が入れ替わりで日野を訪れ、選手やスタッフの指導にあたるという。


 さらには日野の選手がクルセイダーズの一員となる門戸も開かれている。2019−20年のトップリーグが終わると、スーパーラグビーのひとつ下のカテゴリと呼ばれる「Mitre10」リーグがニュージーランドで開幕する。


「そのトライアルに日野のトップ選手を送り込みます。選ばれればMitre10に行く。さらにそのステージで活躍すれば日本人初のクルセイダーズ入りを果たせる仕組みがあります。僕はこれをしたかった。優秀な大学生にとってスーパーラグビーの舞台でプレーするというのは、桜のジャージーを着てワールドカップの舞台で戦うことと匹敵するほどの大きな目標です。これらは間違いなく優秀な大学生を獲得するキラーコンテンツになると確信しています。」


 次々と大きなビジョンを打ち出す細谷氏。講演の最後に「夢」を持つことの重要性を訴えた。「夢を勇気を持って語ることが大事なんです。そして仲間を増やしていくと夢が広がっていく。それが子供たちの憧れとなり、いつしか目標となる。ラグビー協会が構想している『トップリーグネクスト』はこういうことをやりたいのではないかと思っています。だからこそ、僕はレッドドルフィンズでこのような環境を作りたいし、皆さんにも支援されたい。このような夢物語を僕はずーっとNECの時から25年間言ってきました。ようやく夢が現実になる予感を感じています」

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