目の前に迫るラグビーワールドカップ
薫田強化委員長に聞く、日本の現在地

提供:(公財)日本ラグビーフットボール協会

ラグビー元日本代表で現在は男子15人制日本代表の強化委員長を務める薫田真広氏を招き、講演が行われた
ラグビー元日本代表で現在は男子15人制日本代表の強化委員長を務める薫田真広氏を招き、講演が行われた【スポーツナビ】

 公益財団法人港区スポーツふれあい文化健康財団と、公益財団法人日本ラグビーフットボール協会が主催する「みなとスポーツフォーラム 2019年ラグビーワールドカップに向けて」の第91回が3月8日、東京都港区の赤坂区民センターで行われた。


 今回は「いよいよ2019年! ブレイブブロッサムズが咲き誇るために」というテーマのもと、ラグビー元日本代表で現在は男子15人制日本代表強化委員長を務める薫田真広氏を招き、ラグビージャーナリスト・村上晃一さんの進行で講演が行われた。

「大会の成功=日本が勝つこと」だと思っている

RWCTSのキャンプでジェイミーHCと握手をかわす薫田氏(右)
RWCTSのキャンプでジェイミーHCと握手をかわす薫田氏(右)【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 筑波大在学中に日本代表初キャップを獲得した薫田氏は、卒業後東芝府中に入社。2度の全国社会人大会準優勝を果たし、96年からの日本選手権では3連覇に貢献した。日本代表では、ワールドカップ3大会連続出場の経歴を持ち、キャップ数は44を誇る。


 ワールドカップまで200日を切った現在の心境を聞かれると、「とにかく結果を残すことがすべて。強化の現場としましては、大会の成功=日本が勝つことだと思っているので、それしか考えていません」と断言。目の前に迫ったワールドカップに向けて、薫田氏の力強い言葉で講演がスタートした。


 現在、日本では19年のラグビーワールドカップに向けて、サンウルブズ、日本代表第三次ラグビーワールドカップトレーニングスコッド(RWCTS)、ナショナル・デベロップメント・スコッド(NDS)が活動している。NDSは主に若い選手の育成の場として活用されており、ワールドカップトレーニングスコットの「予備軍」に位置付けられている。強化を図る上で土台となるのが、このNDSと呼ばれる若い選手たちだ。


 さらにその上に位置するのが、RWCTSだ。こちらはNDSから引き上げられた選手のほかに、ワールドカップまでに日本代表の資格を得られる可能性のある選手(外国人も含む)が入れられる。では、前述の2つのカテゴリーとサンウルブズとはどういった関係なのか、薫田氏はこう説明する。


「トレーニングスコッドはサンウルブズの枠の中で活動をしています。サンウルブズを使いながら、選手の層を厚くしていきたいという意図があり、なおかつ、サンウルブズを活動させることで、世界トップクラスの試合を多く経験させるという目的もあります。また18年にジェイミー(・ジョセフ)が両方のヘッドコーチ(HC)を務めたことで、選手のセレクションがやりやすくなったり、代表としてのスキルやマインドセットを教え込むことができたことも大きかったですね」

ワールドカップを見据えた「ピーキング」を実施

RWCTSキャンプの様子。選手たちには、シーズン後6週間のオフ期間が与えられた
RWCTSキャンプの様子。選手たちには、シーズン後6週間のオフ期間が与えられた【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 15年のラグビーワールドカップでは南アフリカを破るなど3勝を挙げ、世界を驚かせる「ジャイアント・キリング」を起こした日本代表。その後も16年には前年のワールドカップで8強入りを果たしたウェールズとの敵地戦を3点差で終え、17年にはフランスとのテストマッチに引き分けるなど、日本代表の強化は着実に実を結んでいる。


 こういった変化をもたらした要因として、薫田氏は「サンウルブズで質の高い試合をこなしてきたこと」そして「キックを有効的に使うことで、トライの取り方が上達したこと」を挙げた。さらに、スーパーラグビーでの試合と並行しながら、代表の試合をこなせる体作りを進め、「ピーキング」を意識する調整を行っていたという。トレーニングの開始時期を逆算しながら調整したり、コンディションのピークを試合日に持っていくよう心掛けたことが、強豪国とも渡り合えるフィジカルとメンタルの育成につながった。


 昨年は12月にシーズンが終わり、選手には6週間のオフ期間が与えられることになった。これにも9月のワールドカップを見据えた意図があると薫田氏は説明する。


「しっかりとレスト(休息)を取って、選手自身が次の代表の招集までにゲームができる体を作っておく。そのために大体6週間が必要ということで、その期間をトップリーグが終わったタイミングで各所と調整し設けることにしました。19年に選手がリフレッシュして集まれるような環境を、しっかりと作るよう心掛けました」


 実際に選手も良い状態を保っており、現在5回を終えたトレーニングスコッドでは「今すぐにでも試合ができる状態に仕上がっている」と、薫田氏は胸を張った。

「120パーセントの準備をしなければ勝てない」

いよいよ目の前に迫るW杯に向け、薫田氏は「スタジアムを真っ赤に染めて、選手に声援を」と呼び掛けた
いよいよ目の前に迫るW杯に向け、薫田氏は「スタジアムを真っ赤に染めて、選手に声援を」と呼び掛けた【写真:アフロ】

 9月に開幕するワールドカップでは、日本はアイルランド、スコットランド、ロシア、サモアと同組のプールAに入っている。ロシアとは昨年11月、テストマッチを行い32−27で逆転勝利を収めている。対戦成績は日本の5勝1敗と分があるようにも思えるが、ロシアのフィジカルは脅威であり、薫田氏も「初戦は100パーセントではなく、120パーセントの準備をしなければ勝てない」と警戒する。


 2試合目には、プールAで一番の強敵ともいえるアイルランドとの対戦が控えている。昨年11月のテストマッチではニュージランドを16−9で下し、歴史的なホーム初勝利を挙げている。欧州6カ国対抗戦でも、初戦こそ黒星スタートだったものの、その後は3連勝と波に乗っている。そんな相手に食らいつくために、薫田氏は「アイルランドの堅いディフェンスを相手に、日本のアタックがどれだけ通用するか」とポイントを述べた。4試合全てにおいて、ディフェンスの意識は非常に大切だが、日本がこれまでに培ってきた経験も生きてくる。


「今コーチ陣とはいろいろと試していて、相手によってどういうふうな戦術を採るか。そういった経験をすることが非常に大事だと思っています。(前回大会と比べて)オプションは増えていると思います。本当にすべての情報が筒抜けになるような時代でもありますから、そういった情報合戦に関しても、しっかり準備していくつもりです」


 最後に多くの人が気になっているであろう、ワールドカップで着用するチームジャージについて。薫田氏はこんな裏話をしてくれた。


「実は開催国だからといって、ホームジャージが着用できるわけではありません。特に開幕戦を戦うロシアはファーストジャージが日本と同じ赤色(日本は赤と白)なので、カラークラッシュが起きてしまいます。昨年12月4日、5日のチームマネージャー会議で各プールに分けられ、試合ごとにホームとアウェーを決めるコイントスをやることになりました。


『日本を赤く染めろ』と言っているのに、青色のジャージを着るわけには……と思っていましたが、無事にコイントスでホームを勝ち取り、ホームジャージを着ることが決まりました。ホームでの試合で、大声援を感じながらプレーできるというのは非常に大きなこと。スタジアムを真っ赤に染めていただき、選手に声援を送っていただけたらと思います」

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