「低めに投げろ」は本当に有効か? ピッチングの定説をデータで検証
連載「それってホント? 野球の定説を検証」では、「あのときの僕」が信じていた野球の定説をデータやスポーツ科学を使って検証。観る人・プレーする人・支える人すべてに、野球の真実・野球の新たな面白さをお届けします。
第4回は「ピッチングにおける低めの有効性」について。
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今回はピッチングにおける低めの有効性について迫りたい 【写真は共同】
「低めに集める」「ピッチングの基本は低め」をはじめとするように、指導現場において「低め」は最も使われる言葉のひとつかもしれない。しかし、その多くは指導者の主観や経験に基づく言葉がけである。
低めへの投球は本当に有効なのであろうか? 今回は、2018年のメジャーリーグのデータを使い、投球されたコースの高低が打者に与える影響を考えていく。
低めと高めの飛距離を比較
【Baseball Geeks】
やはり定説通り低めは有効なのだろうか。続いて、さらに細かく打球の特性を見てみる。
低めを打つと打球速度は高まる?
意外にも思えるが、実は高めより低めの方が平均打球速度は速かったのだ。
【Baseball Geeks】
低めを打撃する際にはバットヘッドを加速する時間が長くなりやすいため、スイングの速度が高まりやすい。スイング速度が高まった結果、打球速度も増大したのであろう。
では、なぜ高めのボールは飛距離が右肩上がりに大きくなっていたのか。その理由は打球角度にある。ボールの高さ1センチ毎の平均打球角度をみてみると、高めになるほど急激に打球角度が大きくなっていることが分かる。
【Baseball Geeks】
つまり打球速度と角度の結果を整理すると、低めのボールは打球速度こそ高まりやすいものの、ダウンスイング気味の軌道になりやすいため、結果的に打球角度が小さいということになる。
これが、高めのボールが低めのボールより飛ぶ理由である。
飛距離が大きくなると、必然的に長打が増加し長打率やOPSも高まっていく。得点との相関は、打率よりもOPSの方が高いことが分かっているため、低めへの投球は「長打を抑えて得点を減らす」意味では効果的だと言えるだろう。