無敗の3歳新女王誕生ラヴズオンリーユー 海外GI馬の兄リアルスティール以上の器だ

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2月に一頓挫、「春は間に合わない」と思ったことも

4戦無敗でのオークス戴冠となったが、ここまでの道のりは楽なものではなかった 【写真:中原義史】

 レース後の共同インタビューで、ラヴズオンリーユーに対して絶賛の言葉しか出なかったミルコ。それくらいの衝撃をもたらした若き才媛なのだが、この4戦の道のりは決してイージーモードだったわけではない。矢作調教師が語った。

「よくここまで来たな、と思いますね。2連勝した後、今年の2月に細菌が入って脚が腫れてしまいました。良くなるまでに時間がかかりましたし、正直、春は間に合わないとも思ったんです」

 春を全休にするか、それとも……悩みに悩んだ末、師が下した決断はオークス挑戦。それも、オークスに万全の態勢で臨むにはフローラステークスではなく、2週早い忘れな草賞をステップに使いたい。と言って、馬が劇的に良くなっていったわけではなく、「忘れな草賞は間に合わないレベルだった」という綱渡りの状況だった。そうした中での厩舎の執念の仕上げが実り、忘れな草賞を経てのオークスは「上積みがありましたね」と矢作調教師。パドックも実に堂々としたもので、この性格の落ち着きぶりも含めて、ドバイターフを制した兄リアルスティール以上の器を感じ取っているという。

「筋肉の柔らかさや質、落ち着き具合などリアルスティールより上だと思いますし、大きな夢を見たいですね。もちろん、海外に挑戦したい。この馬といっしょに世界の舞台で戦ってみたいですね」

兄に続け! 夢は世界の舞台

兄リアルスティール以上との評価も……夢はその兄に続く海外GI制覇だ 【写真:中原義史】

 これまで矢作厩舎はリアルスティールをはじめ、スーパーホーネット、グランプリボス、ディープブリランテ、現役ではリスグラシュー、モズアスコットなど数々の馬で海外に挑戦し、参戦した国も英国、ドバイ、香港、豪州と多彩。それだけ海外遠征に対する知見、ノウハウが蓄積された国際派トレーナーとニューヒロインが夢見る海外は、どのような挑戦になるのだろうか。秋にはまだ3歳牝馬三冠の最終戦・秋華賞が残されているから気が早すぎる話かもしれないのだが、見ているこちらもそんな想像をもう今から膨らませたくなるくらい、ラヴズオンリーユーの競馬は見事で、令和最初の樫の女王にふさわしい強さだった。

 なお、勝ち時計の2分22秒8は、2012年にジェンティルドンナがマークした2分23秒6を0秒8も更新するオークスレコード。3歳牝馬としては破格中の破格タイムなのだけど、前週の件もあり、もはやこれくらいでは「ふーん」と普通のことくらいに感じてしまった自分の慣れが怖い。この超高速化の是非は置いておいて、ラヴズオンリーユーのパフォーマンスは時計抜きに素晴らしいものであったし、いよいよ次週に迫った競馬の祭典・日本ダービーでも、時計ではないところで「凄い!」と唸るようなレースを期待したいものだ。

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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