連載:それってホント? 野球の定説を検証

注目の指標「バレル」とは? 打球速度と角度の重要性

Baseball Geeks

打球速度で評価されたジャッジ

ヤンキースの若き主砲・ジャッジは打球速度の速さから見出された象徴的な選手だ 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 打球速度は選手を評価するうえでも大きな注目を集めている。ここではヤンキースの主砲、アーロン・ジャッジの例を紹介したい。

 ジャッジは2016年シーズン終盤に、トップレベルの打球速度を残した。当時はデビュー初年度で出場試合こそ少なかったものの、首脳陣は強打者の片りんをのぞかせたジャッジに大きな期待をかけた。すると、レギュラーに定着した翌17年に見事本塁打王に輝き、すぐさまその打力を証明したのだ。このジャッジの例のように、打球速度は「真の強打者」を見つけ出す指標のひとつとして活用されてきている。
 昨シーズンのメジャーリーグの打球速度ランキングをみても、タイトル経験者を含め軒並み強打者たちが名を連ねている。

【出典『baseballsavant.mlb.com』】

 18年は大谷翔平(エンゼルス)がトップ10に次ぐ11位の成績を残した。打球速度でみれば大谷はメジャーの強打者にも遜色ない能力であり、打者に専念する今シーズンはどんな成績を残すのか今から楽しみでならない。

「バレル」に必要な打球速度と角度

 膨大な打球データが積み重なることにより、メジャーリーグでは「バレル」という新指標も登場した。そのゾーンに入った打球は打率5割、長打率1.500を超えるという打球速度と打球角度の組み合わせであり、実際に16年にバレルゾーンに入った打球の成績は、打率8割2分2厘、長打率2.386を超えていた。

 打球がバレルとなるには、少なくとも打球速度が158km/h以上必要とされる。その際は26〜30度の範囲のみバレルとなるが、打球速度が上がる毎に角度の範囲は広がっていく。閾値(しきいち:一線を越える値)である187km/hに到達すると、なんと8〜50度の範囲でバレルとなる。

バレルゾーンの説明図 【出典『MLB.com』】

 バレルとなった打球は大半が長打になるため、打者はバレルの打球を増やす努力をするべきだ。先ほど打球速度が速いと長打率が高くなっていた理由は、バレルゾーンに入る範囲が広がることが大きく関わっており、メジャーの打者たちはこのような打球角度を意識しながら打球速度を高める努力をしている。

「見える」データをプレーに生かす

 Statcastの発展により、打球そのものを数値化することが可能になった。打撃はこれまで経験や印象で語られがちであったが、「見える」ようになったデータを活用することでより適切な評価や指導ができるようになりつつある。打者の能力基準が変わる日もそう遠くないかもしれない。

(文:森本崚太/Baseball Geeks)

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著者プロフィール

株式会社ネクストベースが運営する最先端の野球データ分析サイト。「ボールがノビるって何?」「フライボール革命って日本人には不可能?」など、野球の定説や常識をトラッキングデータとスポーツ科学の視点で分析・検証していきます。 "野球をもっと面白くしたい" "野球の真実を伝えたい"。これがベースボールギークスの思いです。 書籍『新時代の野球データ論 フライボール革命のメカニズム』(カンゼン)が7/16より絶賛発売中。

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