U-18侍ジャパンが春に合宿を行う意義 球児の心に響いた「世界一」の合言葉

松倉雄太
 8月30日から行われる「WBSC U−18ベースボールワールドカップ(W杯)」を見据え、高校日本代表候補研修合宿が5日からの3日間、関西地方で行われた。春季大会と日程が重なった選手、ケガで辞退した選手を除く、第1次候補選手31名が参加した。

選考ではなく「あくまでも研修」

3日間にわたる合宿を終えたU-18侍ジャパン一次候補の選手たち 【写真は共同】

 今回の合宿は選手選考ではなく、あくまでも研修。日本高等学校野球連盟(日本高野連)が発表した合宿の目的にはこう書かれている。

<研修の目的>
2019年に開催される第29回WBSC U-18ベースボールワールドカップへ向けて、推薦された選手たちが集合し、日本が目指す野球の方向性や国際大会へ向けた心構えやルール、マナー、木製バットへの対応などを研修する。
また、選手同士は刺激を受け、切磋琢磨(せっさたくま)し合える関係作りを行う。同ワールドカップへ向けて代表チームの充実を図る。
(あくまでも選手の研修や日本代表の一体感を醸成することを目的とする。本合宿での選手選考が目的ではない)

<研修内容>
1.木製バットへの対応
2.国際試合での戦い方(国際審判員からのルール解説など)
3.ドーピング検査について
4.日本代表に求められるもの(国際大会対策プロジェクトメンバー)

 日本高野連では、3位に終わった昨年のアジア選手権の後、国際大会対策プロジェクトチームを同年秋に発足。技術・振興委員会とともに、高校日本代表チームを今後どうしていくべきかなどを協議してきた。

 その会議で出した結論の一つが、代表候補のうちに合宿を行って、選手同士やスタッフ間のコミュニケーションを図るというもの。これまでは8月に決まる本メンバーで短期間の合宿でしか集まれなかったため、高校野球界としては画期的な試みだ。

授業そのものだった西谷氏の講義

 合宿初日は座学。国際大会プロジェクトチームのメンバーでもある西谷浩一氏(大阪桐蔭監督)と渡辺元智氏(前横浜監督)が日本代表に求められるものをテーマに講義をした。

 中でも2013年、15年のワールドカップで代表チームを指揮し、2大会連続準優勝だった西谷氏の講義は授業そのもの。その一端を紹介したい。

 まず、先のセンバツで優勝した東邦のエース・石川昂弥にはこう語りかけた。

「石川くん、優勝おめでとうございます。どうですか? 体は今、疲れていますか?」

 その問いかけに、「ありがとうございます。(体は)そんなことないです」と即答した石川。西谷氏はそれを聞いてこう話しかけた。

「そんなことないなと思うものですが、体はやっぱり疲れていると思います。特に投手ですし。これが夏の大会でしたら、もっと暑い中での戦いになります。決勝までいくとかなり疲れると思います。その後すぐに代表の招集です。そこでチームを作ってやっていく。スケジュールがタイトな中で、世界一に備えるということは至難の業です。ただ、JAPANに選ばれた20名の選手はそれができるメンバーだと思っています」

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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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