「自分からやろうと思える叱り方か」 関東第一・米澤貴光
2015年、オコエ瑠偉(写真)を擁し甲子園を席巻した関東第一。米澤監督の怒り方にはある特徴がある 【写真は共同】
そんな旧態依然とした指導と一線を画すのが関東一高の米澤貴光監督。決して声を荒げることはない。怒っているのを想像するのが難しいほど静かな印象だ。だからといって、選手たちは野放しにされてはいない。やるべきことはきっちりやる。むしろ、他校よりも細かい動きができている。なぜ、そうなるのか。米澤監督流の怒鳴らない指導法とは?
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指導者は“気づかせ屋”
怒っている姿を想像するのが難しいほど、米澤監督は怒鳴らない。声を荒らげながら指導する人が多い高校野球界の中では、異色の存在といっていいかもしれない。
だからといって、ぬるいわけではない。選手たちはむしろ、やるべきことをきちっとやっている。全力疾走や抜け目のない走塁、カバーリングやバックアップなどは間違いなく東京ではナンバーワン。甲子園常連になっているのもうなずける。監督がガミガミ言わないのに、なぜ選手たちは徹底事項を守れるのだろうか。
「必要なのでやらなきゃいけないと思うんですよ。例えば、全力で走ることだって、簡単なようで難しいじゃないですか。できない子には、最初に『なんで走らないのか?』ということを聞いてみる。『走らないと怒られる』じゃあ、土壇場で走らないんですよね。気づかないと変わらないですから。本人が本気になってるかどうか、本気にさせられるかどうかだと思います。考えてみると、プラスのことを言ってるのかもしれないですね。『一歩でもお前が速く走ったらセーフだった。セーフならデカいよな。どうなんだ?』とか、その先がいつもプラスというイメージ。『全力で走らないからバカヤロー』だとマイナスじゃないですか。『何で走らないんだ?』と言っても、気づいていない子が多い。『自分は走ってます』と言いますから。そういうときは、周りに『お前らどう思う?』って聞きます。そうすると、『走ってません』となる」
練習試合などでは、抜いたプレーがあるごとに言う。「今のがセーフだったら、その後の試合展開はどうなってたんだ?」と問い、考えさせ、事の大きさを実感させるのだ。
「『全力で走らない甲子園球児はいると思うか?』と言ったら、子どもたちは『絶対いない』って言うんですよね。じゃあ、『やらないってことは、お前は甲子園に出る選手じゃないってことなんじゃないか』という話もします。叱るって当然しなきゃいけないことだと思うんですけど、つぶす怒り方なのか、自分からやろうと思える怒り方、叱り方なのかの差はあると思うんですよね。『絶対こうしろ』って、僕はあんまりないですね。相手があるスポーツなんで。どっちかといったら、ダメからスタートしてるかもしれない。『ダメでもいいから振ってこいよ。3回振ってこい』とか。それで振ってこないことに怒りますね。『何でお前は振らないんだよ』って。振ってきたらOKで、次もいけるだろという話もしますし、そこで『じゃあ、次はこう考えろ』とかいう話はしますね」
2010年にはこんなことがあった。ショート・伊藤慎二の送球ミスが目立っていた。実は伊藤は右手首を骨折しながら試合に出ていたのだが、周りから「肩が弱いと言われたくない」という個人的な見栄から、ノーバウンドの送球にこだわった結果、ミスが増えていた。そこで米澤監督が伊藤を呼んで言ったのが、こんな言葉だった。
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