目の前に迫るラグビーワールドカップ 薫田強化委員長に聞く、日本の現在地
新リーグの創設には「かなりの時間を要すると思う」
講演に続いて、来場者と薫田氏の質疑応答が行われた 【スポーツナビ】
――新たな国際大会として、12カ国で行う「ネーションズ・チャンピオンシップ」の創設が検討されているという報道があったが?
ワールドラグビーとしては、やりたいという希望があることは確かです。12カ国から漏れるチームはどうなのかということと、入れ替え戦がどうなるのかという議論もあります。現在、収益としては欧州6カ国対抗戦もある中で、わざわざ(新リーグの創設を)やる必要性はあるのか、という話もあります。そういった各方面での疑問がうまくまとまるか、という話になってきます。
実際に新リーグが行われるということになれば、参加しない国は参加国との対戦機会がなくなってしまう。もし対戦したいということであれば、別にテストマッチを組むことになるので費用もかかる。強化としては、後退することは間違いないですよね。入れ替え戦があるとはいえ、下のチームが強くなることは難しいですからね。話がまとまるまでは、かなりの時間かかかるのではないかと思います。
――サンウルブズは今後も継続してほしいと思いますか?
1つの強化の軸になりますので、どう残すか。強化としては、日本の選手層をいかに厚くするかということを考えなければなりませんので、2チーム、あるいは3チームくらいがスーパーラグビーに入れるのが理想だと思っています。サンウルブズを使いながらいろいろな経験を積ませてアカデミーを強化するということもありますし、非常に大事なことだと思います。
――試合を行うスタジアム対し、要望を出したりはしていますか?
公平性という観点から、特別な要望を出すことはありません。われわれの要望と言うよりは、ラグビーをするためには芝生の状態がいいグラウンドが必要だと思います。組織委員会には「少しでもいいラグビーをするには、ピッチの状態が良好なこと。そしてそれは全チームに公平性をもってやるべきだ」という話はさせていただきました。
――ジェイミーをHCに選んだ理由を教えてください。
彼はとても「厳しい」指導者です。エディー(・ジョーンズ前HC)とは違った厳しさを持っています。今年はすでに5回ほどワールドカップトレーニングスコッドのキャンプをやっていますが、かなりハードな練習をしている。16年からの彼の反省としてはメンタリティーをどう強くするかにフォーカスしています。フィジカルやスキルも含めて「一貫性」という言い方をよくしますが、どんなプレッシャー下でも一貫性を追い求めていきます。
あとは「コンタクト」の部分。彼はそういったところで負けるのが大嫌いだと思います。日本人は接点の強さを上げていかなければいけない。そういうことにこだわって鍛え上げようとしている。そのために非常にハードな練習もやっていますし、必ずそれがラグビーワールドカップ本番で生きてきます。
――トレーニングスコッドの中で、薫田さんが期待している選手は?
スコッド全員に期待したい。しかし、1名ずつ挙げるのであれば、FWですと堀江翔太ですね。けがをしていましたけれど、やはり彼の存在は非常に大きいと思います。今はけがからも戻って来てランニングをしていますし、状態としては大丈夫。彼の経験値はセットプレーだけではなく、リーチを支えるリーダーとしても、とても大切だと思います。
バックスですと、田村優。彼にはキックの成功率も含めて期待しています。11月のトレーニングマッチの反省としては、キックの精度が落ちているということもあった。ワールドカップは1ペナルティーで勝敗が決まるような世界だと思います。
――ジェイミーHCが選手選考の際に重視するポイントは?
「逃げない」選手かどうかということです。代表コーチとしては当たり前ですけれど、トップ8の選手たちと対等に戦える、そういったメンタリティーとスキルがあるかどうかが1番の選考ポイントだと思います。世界で通用するため、ラグビーワールドカップで日本が目標をクリアするためには、トップ8の選手たちと対等に戦えなくてはいけない。それがひとつの基準になっていると思います。