連載:道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔

日本ハムの強い信念と挑戦 球団全体で果敢に進めた「大谷獲得」

佐々木亨
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日本ハム側も覚悟を持って指名、交渉を行っていたという 【写真は共同】

 日本ハムもまた、震えるような時間を過ごすことになる。
 東京都港区にあるグラウンドプリンスホテル新高輪で行われたドラフト会議。「運命のドラフト」とも呼ばれるその空間で、日本ハムのテーブルには例年にないほどの独特の空気感、緊張感が流れていたのは想像に難くない。当時は球団のゼネラルマネージャー、いわゆるGMを務めていた山田正雄(現・スカウト顧問)は、2012年の秋空を思い浮かべながら静かにこう語り始めた。

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「ドラフト2日前に、私どもの日本ハムは大谷を1位指名で行くと発表しました。もちろん、ドラフト当日にいきなり指名してもルール上では何ら問題はなかった。実際にそうしようとも思ったのですが、それでは大谷や花巻東高校に非常に迷惑をかけることになる。また、日本ハムと花巻東高校は何かできているんじゃないか。出来レースに持ち込んでいるんじゃないかと思われる懸念もあったものですから、私どもとしては2日前に公表した経緯がありました。もちろん他球団が大谷を指名する可能性はある。ですから、あのドラフト会場では、どこか他球団が指名にくるんじゃないかとソワソワしていました」

 日本ハムを除く11球団がどういう動きを見せるか。それに対する不安や緊張があった。実際、山田は「どこか1球団ぐらいは(指名に)くるんじゃないか」と思っていたという。特に大谷の地元である岩手県に近い宮城県仙台市をフランチャイズとする東北楽天ゴールデンイーグルスが指名するのでないか。山田はそんな予想もしていた。
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著者プロフィール

1974年岩手県生まれ。スポーツライター。雑誌編集者を経て独立。著書に『あきらめない街、石巻 その力に俺たちはなる』(ベースボール・マガジン社)、共著に『横浜vs.PL学園 松坂大輔と戦った男たちは今』(朝日文庫)、『甲子園 歴史を変えた9試合』(小学館)、『甲子園 激闘の記憶』(ベースボール・マガジン社)、『王者の魂』(日刊スポーツ出版社)などがある。主に野球をフィールドに活動するなかで、大谷翔平選手の取材を花巻東高校時代の15歳から続ける。

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