連載:道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔

日本一の景色は遠く――1勝もできなかった大谷翔平の甲子園

佐々木亨
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「負けた思い出、悔しい思い出しかない」と話す大谷(写真左端)。甲子園では1勝もすることができなかった 【写真は共同】

 全国の舞台では一度も勝てなかった。

「僕は甲子園で1回も勝ったことがなかったので、勝ってみたかったというのは今でも思いますね」

 怪我を押して挑んだ2年夏は、「万全の状態で投げられないとわかっていた」が、帝京(東東京)との1回戦で2番手としてマウンドに上がった。左足の痛みを少しでも和らげるために、ステップ幅を通常よりも約一足分縮めて、ほぼ上体の力だけで投げた。150キロを計測したが、実力からはほど遠いピッチングで、チームも初戦敗退となった。

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 翌2012年の3年春のセンバツでは、大阪桐蔭と1回戦でぶつかった。藤浪晋太郎(現・阪神)と投げ合い、打っては自身よりも身長が4センチ高い右腕から右中間へソロ本塁打を放った。だがその時点でも、大谷は苦しみの渦中にいた。怪我の影響は残ったままで、実戦マウンドの感覚が戻らずに臨んだピッチングだった。その年の甲子園で春夏連覇を成し遂げることになる大阪桐蔭に打ち込まれ、前年夏に引き続いて初戦で姿を消した。

 大谷にとっての甲子園は悔しい思い出しかない。
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著者プロフィール

1974年岩手県生まれ。スポーツライター。雑誌編集者を経て独立。著書に『あきらめない街、石巻 その力に俺たちはなる』(ベースボール・マガジン社)、共著に『横浜vs.PL学園 松坂大輔と戦った男たちは今』(朝日文庫)、『甲子園 歴史を変えた9試合』(小学館)、『甲子園 激闘の記憶』(ベースボール・マガジン社)、『王者の魂』(日刊スポーツ出版社)などがある。主に野球をフィールドに活動するなかで、大谷翔平選手の取材を花巻東高校時代の15歳から続ける。

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