連載:道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔

大谷翔平が持つ「器」は大き過ぎる だから、成長を邪魔しないことが大事

佐々木亨
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佐々木監督の指導もあって、大谷は2016年10月にプロ野球最速となる165キロを記録した 【写真は共同】

 ふとした時、佐々木監督は人間の「器の大きさ」について考えることがある。

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 庭いじりから始まった佐々木監督の趣味は盆栽へと変わった。今では「石」にも惹きつけられるのだが、同じように盆栽の奥深さに魅了されている。もともと植物に興味があったわけではなかった。心の安らぎも求めるなかで、土に触れ、言葉はなくとも何かを語りかけてくるような盆栽の姿に何となく惹かれていった。
 盆栽は、語りかける。そして、教えてくれる。盆栽を通して改めて気づかされたこともあったという。
 佐々木監督は、秋になれば黄葉するイチョウの木が好きだ。ある日、父親から小さな植木鉢に入ったイチョウをもらったことがあった。

「本当は庭に植えるような大きなイチョウが欲しかったんです。でもそのとき、オヤジに言われましてね。小さな植木鉢に入ったイチョウも、庭に植え替えたら大きく育つんだ、と」

 その時点で植物についての知識がさほどなかった佐々木監督にとって、それは衝撃の事実だった。それまでは、小さなものは小さいまま、植木鉢用の小さな苗木があるものだと思っていたのだ。植物や盆栽に興味がない人なら、それは当然の考えかもしれない。だが、現実は違った。佐々木監督が照れくさそうに語る。

「器の大きさによって、木の大きさが変わることを、そのときに初めて知りました。そして、それは指導にも通ずるものがあると気づかされました。器を大きくしてあげれば、それ相応の大きさになる。『おまえはこれだけだ』と言って育てれば、それまでの選手にしか育たない、と。ある選手には段階を踏みながら、器の大きさを変えてあげることも必要だと感じました」
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著者プロフィール

1974年岩手県生まれ。スポーツライター。雑誌編集者を経て独立。著書に『あきらめない街、石巻 その力に俺たちはなる』(ベースボール・マガジン社)、共著に『横浜vs.PL学園 松坂大輔と戦った男たちは今』(朝日文庫)、『甲子園 歴史を変えた9試合』(小学館)、『甲子園 激闘の記憶』(ベースボール・マガジン社)、『王者の魂』(日刊スポーツ出版社)などがある。主に野球をフィールドに活動するなかで、大谷翔平選手の取材を花巻東高校時代の15歳から続ける。

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