道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔
大谷を育て上げるために何が必要か
「目標達成表」に掲げた163キロの意味

アプリ限定

必要な項目として刻んだ七つの言葉

大谷を160キロは出すために、目標に「163キロ」と記入していた
大谷を160キロは出すために、目標に「163キロ」と記入していた【写真は共同】

 花巻東高校には具体的な目標を一枚の用紙に書き込む『目標達成表』というものがある。これまで多くの媒体が紹介して今ではすっかりと馴染み深いものになったかもしれないが、『目標設定シート』とも呼ばれるそれは、選手たちが入学後すぐに書くものだ。正方形の枠を大きく九つに分け、その一マスをさらに九分割した用紙には、目標や、その目標を達成するために必要とされる要素が細かく記されている。それは実際に一般企業が取り入れている人材育成のシステムやビジネス書を参考に佐々木監督が作り出したものだ。


「それは要するに人生の大きなライフプランのようなものです。将来的には何をやりたいのか。そのために何をしなければいけないのか。三年間の目標だったり、人生の目標だったり、その都度、オフシーズンの間だけマス目の言葉を修正したり加えたりすることもあります。ウチでは選手全員に書かせています」

 用紙の中央に書かれた事柄が、その選手の大きな柱となる目標になっていくわけだが、大谷は一年時の目標設定シートの中央に「ドラフト1 8球団」と書いた。プロ野球のドラフト会議で8球団から1位指名されることを目指したのだ。そのために必要な要素として、九つのマス目の中央にあるその大きな目標を囲むように、「キレ」「コントロール」「体づくり」「メンタル」「人間性」「運」「変化球」といった七つの言葉を書き込んだ。たとえば、「運」という項目。そこには大谷のこんな意思が含まれている。


「ちゃんとした人間に、ちゃんとした成果が出てほしい。どの分野においても僕はそう思っています。真面目にやってきた人間が『てっぺん』にいくべきだと思っていますし、それなりの成果を出すべきだと思っています。本当の意味でのトップの人間とはそうあるべきだと僕は信じている。信じているからには、自分もそんなふうにやっていきたいという気持ちは今でもあります」


 そしてもう一つ、大谷は『スピード 160キロ』という要素も書き込んでいる。


「最初は、160キロは無理な数字なんじゃないかと思っていました。ただ、周りの方々にずっと『いける』と言われていましたし、体を管理してくださるトレーナーさんにもそう言われていたので、いつしか勝手に160キロは『いけるのかな』と、その気になっていましたね」


 ただ、これが大谷らしいと言えばそうなのだが、160キロを出すために本人は別の用紙に「163キロ」という目標数値を書いた。大谷は言う。

佐々木亨

1974年岩手県生まれ。スポーツライター。雑誌編集者を経て独立。著書に『あきらめない街、石巻 その力に俺たちはなる』(ベースボール・マガジン社)、共著に『横浜vs.PL学園 松坂大輔と戦った男たちは今』(朝日文庫)、『甲子園 歴史を変えた9試合』(小学館)、『甲子園 激闘の記憶』(ベースボール・マガジン社)、『王者の魂』(日刊スポーツ出版社)などがある。主に野球をフィールドに活動するなかで、大谷翔平選手の取材を花巻東高校時代の15歳から続ける。

スポナビDo

イベント・大会一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント