不安を抱える日本と強すぎるイラン 日々是亜洲杯2019(1月12日)

宇都宮徹壱

大迫の出場が絶望的なオマーン戦

仲良く記念撮影に収まるイランとベトナムのサポーター。どちらも試合前からテンション高め 【宇都宮徹壱】

 アジアカップ8日目。この日は15時にアブダビでベトナム対イラン、17時30分にはシャルジャでイエメン対イラク、そして20時からはドバイでレバノン対サウジアラビアの試合が行われる。その前に忘れてならないのが、オマーン戦を控えた日本代表の前日練習と会見。こうした国際大会では、キックオフの時間帯に合わせるのがセオリーだが(オマーン戦は17時30分キックオフ)、今回は前日練習が11時で会見が12時15分に設定された。取材者としては、15時からの試合を取材できるのでありがたいが、現場は当日の環境へのアジャストに神経を使うことになりそうだ。

 11時の前日練習は、いつものように冒頭15分の公開。取材者がまず確認するのは「誰が練習に参加していないか」である。この日は、GKの東口順昭とFWの大迫勇也。別メニューにも加わっていない。大迫はトルクメニスタン戦にフル出場して以降、もともと痛めていた右臀部(でんぶ)の症状がぶり返したと聞いている。東口については、昨日(11日)の練習で腰を痛めたとのこと。この2人について森保一監督は「明日の試合に向けては(出場は)難しいと思いますが、順調に回復すれば早い段階でチームに合流できると思っています」と会見で述べている。

 個人的には、初戦で大迫を90分も引っ張るべきではなかったと、今でも思っている。とはいえ大迫の2ゴールがあったからこそ、日本は勝ち点3を得られたわけで、そこは「トレードオフ」と割り切るしかないだろう。おそらく、大迫の代役は武藤嘉紀、そしてボランチには冨安健洋ではなく塩谷司が起用されるのではないか。2人とも現体制になって初の招集だが、指揮官は「きちんとスカウティングした上で招集しているので、(試合に出れば)チームにしっかりフィットして貢献してくれると思っています」とコメントしている。不安材料に事欠かない日本だが、今は森保監督の言葉を信じるほかないだろう。

 会見終了後、会場のシェイク・ザイード・スタジアムからアルナヒヤーン・スタジアムに移動。15時キックオフのベトナム対イランに十分間に合うことができた。グループDの第1戦は、イランがイエメンに5−0、イラクがベトナムに3−2で勝利。イランとイラクの2強に、何とか食らいつこうとしているのが、現在3位のベトナムだ。イラクとの初戦では2度リードしたものの、そのたびに追いつかれ、終了間際のFKで逆転負けを喫している。今大会はスズキカップ(ASEAN諸国によるカップ戦)覇者として、3大会ぶりの本大会に挑むベトナム。果たして「アジア最強」のイランを相手に、どこまで戦えるのだろうか。

「アジア最強」の力を見せつけたイラン

スタンドの一角を赤く埋め尽くしたベトナムのサポーター。試合は0−2の完敗に終わった 【宇都宮徹壱】

 試合は序盤からイランのペース。3−4−3のベトナムは、両ウィングを最終ラインまで下げて、身体を張ったブロックで対応するので精いっぱいだった。試合が進むにつれて目立つのが、イランとベトナムの体格差。イランはベトナムに対し、スタメン11人の平均身長で8.7センチ、平均体重で9.7キロも上回っていた。特に体重の違いによるパワーの差は歴然だ。無理やりボクシングに当てはめると、イランがライトヘビー級、ベトナムは3階級下のスーパーウェルター級。対人での強さはもちろん、スピードでもイランはベトナムを凌駕(りょうが)していた。もはやこうなると、大人と少年の戦いである。

 イランが先制したのは前半38分。ボリヤ・ガフーリの右サイドへのスルーパスにサマン・ゴッドスがゴールラインぎりぎりで折り返し、最後はサルダル・アズムンが高い打点からヘディングで決めた。アズムンは後半24分にも追加点。途中出場のメフディ・トラビからのパスを中央で受けると、相手DF2人の激しいチャージをものともせず、優雅な左足のスウィングで再びネットを揺らした。対するベトナムも後半早々、水戸ホーリーホックでのプレー経験(2016年)があるグエン・コンフォンがGKとの1対1の局面を作るも、相手のブロックに阻まれてゴールならず。結局、ベトナムの決定機はこのシーンのみであった。

 試合後、イランのカルロス・ケイロス監督は、「ベトナムはテクニックでもメンタル面でも優れていて、簡単な相手ではなかった」としながらも、「われわれはポゼッションで上回り、集中して戦うことができた。(2ゴールを決めた)アズムンも試合ごとに良くなっている」と一定の満足を示した。一方、ベトナムを指揮する韓国人のパク・ハンソ監督は「今大会は(イラクやイランのような)強豪とのハイレベルな試合を経験することができた。ベトナムは若いチームなので、未来は明るいと言える」。まだイエメン戦を残してはいるが、すでに2敗したことを思えば、総括めいたコメントになるのも致し方ないだろう。

 今大会のイランを2試合取材して、あらためて確信したのは「現時点での最強チームはイランである」という事実だ。2試合で7得点の失点ゼロ。単にFIFA(国際サッカー連盟)ランキングがアジア最上位(29位)にいる、というだけではない。攻守にタレントが充実していて、しかもウィークポイントが見当たらない。これこそ、8年間にわたるケイロス監督の一貫指導のたまものである。今の日本が対戦したら、おそらくひとたまりもないだろう。ただ幸いにして、両者がグループを通過したら、対戦するのは早くて準決勝である。それまでの間に、日本はどこまでチーム力を高めることができるか。次のオマーン戦が、その試金石となる。
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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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