健闘のラグビー日本代表、逆転負けの理由
イングランド戦「勝てた試合を…」

両チームの選手交代が勝負のポイントに

世界トップクラスの実力を示したFLリーチ主将
世界トップクラスの実力を示したFLリーチ主将【斉藤健仁】

 後半、19分まで日本代表はリードしていたが、結局、ほとんど敵陣に入ることができず得点すら挙げることができなかった。実は「後半の入りが一番の課題だった」(リーチ)というブレイブブロッサムズ(日本代表の愛称)は勝負に出ていた。ハーフタイムでLOヘル ウヴェからアニセ サムエラに、FLを西川征克から布巻峻介に、SHを田中史朗から流大に代えた。ウヴェは負傷だったが、FLとSHの交代は予定通りだったという。


 イングランド代表も負けるわけにはいかないと、ジョーンズHCは控えに入っていた1本目の選手を次々にピッチに送り出す。特に、共同キャプテンのオーウェン・ファレルが後半最初からインサイドCTBの位置に入り、冷静にキックでゲームをコントロール。またディフェンスでも、接点に執拗にプレッシャーをかけることなく、素早くセットし、規律を守ることに主眼を置いてきた。


 すると日本代表はノックオンなどの簡単なミスだけでなく、ラックに関係ない選手までも排除してしまい2度、ペナルティーを取られる。またモールやディフェンスのラインオフサイドなどでもペナルティーを犯し、自陣に釘付けにされる。自然とイングランド代表のチャンスが増え、PGやトライで得点を重ねられ、15対35で逆転負けを喫した。

「ずっと集中し続けなければ勝てない」

イングランドとは体格の差があったが、ラインアウトも健闘した
イングランドとは体格の差があったが、ラインアウトも健闘した【斉藤健仁】

 試合後、リーチ主将は「勝てた試合を負けた。後半立ち上がりの10分がうまくいかなかった。がっかり」と悔しそうな表情を見せた。ジョセフHCもやはり、勝負どころの後半の最初の部分でペナルティーが増えたことを悔やんだ。「ティア1のチームはちょっと苦戦したり、ビハインドになったりするとフィジカル、インテンシティー(強度)を次のレベル上げられる。ハーフタイムに、エナジーを与えるためにメンバーを代えたが、判断、精度が落ちてしまった。相手の流れになったところで自分たちがペナルティーをしてしまった」


 他の選手に聞いてもHO坂手淳史は「みんなで走って、走ってのディフェンスはできていたし、フィットネスは上がっている手応えはありました。後半にもう一度集中力を持ち続けないとだめですし、ずっと集中し続けなければ勝てない」。PR稲垣啓太は「前半と後半はペナルティーが起きたか、起きていないかの差。攻め込んだときのペナルティーはメンタル的なダメージが大きい。本当は7点スコアできたはずなのに、相手に取られると14点取られる感覚。やっぱりペナルティーを減らすことが非常な大事な要素」と冷静に振り返った。


 個人的には後半、2度、SO田村がキックを蹴ったが、しっかりチェイスできていなかった場面も気になった。やはりティア1に対して80分、一貫したパフォーマンスを続けることは難しかったと言えよう。また高い強度の中でしっかりとトライを取り切ること、勝負どころでペナルティーを極力減らすことは来年に向けて大きな宿題となった。

「若くて才能のある選手がブレイクしている」

来年のワールドカップに向けて、さらなるレベルアップが求められている
来年のワールドカップに向けて、さらなるレベルアップが求められている【斉藤健仁】

 ただ、リーチ主将は「成長したところはブレイクダウン。ラインアウト、ラインディフェンスも良かった。試合の立ち上がり、モメンタムの姿勢もすごく良かった」と胸を張った。9月、10月と合宿を張り、さらに試合を通してトライ&エラーを重ねて、しっかりと8万人を超えるアウェイの観衆の中でも自分たちのパフォーマンスを出せたことは評価できる。 


 またHO堀江翔太、FB松島幸太朗、WTBレメキ ロマノ ラヴァら主力6人がケガなどの理由で不在の中で、CTB中村、FBウィリアム・トゥポウが及第点のプレーを披露。選手層を厚くするという点では意味を持つ試合となった。またイングランド代表ジョーンズHCが「(日本代表の)ジェイミー(・ジョセフ)とトニー(・ブラウン)はすばらしい仕事をしていますし、リーチの卓越したキャプテンシーで次々と若くて才能のある選手がブレイクしている」と言うように、PR具智元、HO坂手、No.8姫野和樹ら若手が大舞台で堂々とプレーした姿も頼もしかった。


「どのくらいチームが成長したか確認したい」。試合前に、リーチ主将が言っていたように、日本代表は「聖地」で、2019年ラグビーW杯でベスト8に入るために明るい材料を得ただけでなく、課題も明白になった。W杯のホスト国として、世界に向けて、来年への期待を抱かせるには十分な試合だった。開幕まであと10カ月、ティア1との差を埋めるための戦いは続いていく。

斉藤健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。 学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「世界最強のゴールキーパー論」(出版芸術社)、「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)など著書多数。最新刊は「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版/2017年11月刊)。

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