54クラブのホームゲームを観戦した男 ひらちゃん流Jリーグの楽しみ方<前編>
取材現場で一切ノートをとらない理由
Jリーグの魅力がたっぷりと詰まった一冊だ 【宇都宮徹壱】
実は僕、現場では一切メモをとらないんですよ。ここに書いてあることは全部、自分で記憶していることばかりです。たとえばミックスゾーンで選手と話をしても、メモはとらないし録音もしません。手ぶらで話を聞いています。それで記憶に残らなければ、そんなに大した話ではなかったと割り切ります。逆に自分の中でインパクトのある話だったら、絶対に記憶に残りますから。
──なるほど。そのあたりの発想は、われわれライターや記者とまったく違いますね。
もちろん僕も、取材パスをいただいて試合を見ているわけですけれど、あまり仕事仕事してしまうと無理して何かを見つけようとするじゃないですか。それは嫌だなっていうのが、自分の中にはありましたね。一度、「取材先でビデオを回してもらえませんか?」という依頼があったんですけれど、それも仕事っぽくなってしまうのでお断りしました。記者席にいるときもノートはつけません。でも、自宅でJリーグの中継を見ているときは、逆にノートをつけます(笑)。フォーメーションとか。
──その感覚は非常に面白いですね。現場での出来事を記憶力でふるいをかけて、逆に自宅で思考を整理するときはノートをつけると。
実はこの本についても、まったく同じ構成のノートが存在するんですよ。1ページ目に「札幌」と書いて、札幌に関する「おすすめTOP5」の候補をばーっと出していくんですね。次のページでは、札幌のコラムのネタになりそうなエピソードを書き出して。その次が「(ブラウブリッツ)秋田」、という感じで54クラブ分。首都圏のクラブは情報がありすぎて削る作業が多かったんですけど、逆に一度しか行く機会のなかったクラブは「これしかない!」という感じで。その濃淡が面白かったですね。
「対戦相手のことも知ってほしい」
その意識はありますね。サポーターの皆さん、自分たちが応援しているチームのことはよく知っているんですよ。でも意外と、対戦相手のことをあまりご存じない。たとえば選手紹介のときも「え、あの選手は今ここにいるんだ!」みたいなリアクションをするんですよね。そういうことも含めて、対戦相手のことも知ってほしいなという思いはありました。
──対戦相手の情報だけではなく、その土地の名所とか名産品とか、あとはスタジアムグルメやマスコットのことも知ってほしいですよね。ところでこの本を出されてから、取材先でいろいろなリアクションがあったと思うのですが、いかがでしょうか?
やっぱり「平ちゃん、本読みましたよ!」とか「買いましたよ!」と言ってもらえるのが、すごくうれしいですね。最近、カマタマーレ讃岐の試合に行った時には、1歳半か2歳くらいのお子さんが、むっちゃ僕の本に食いついているのを知って驚いたんですよ。書いてある内容は理解できないと思うんですけれど、色数が多いからですかね(笑)。
──マスコットに食いついているかもしれないですね(笑)。それこそ下は1歳から、上は80歳くらいのお年寄りまで楽しんでもらえるなら、書き手としてうれしいですよね。
そうですね。僕はよくテレビ番組に出させていただいていますけれど、時々どんな人に届けているのか分からなくなる時があるんですよ。でも本だったら、サインを書かせていただきながら「この人が読んでくれているんだ」って実感できますよね。そういうのって、すごくうれしいです。
──それこそ平畠さんは、あちこちの会場で声をかけられたり、サインを求められたりすると思うんですけれど、まったく苦にならないんでしょうか?
苦にならないというか、「はよ終われよ」とか思ったことは一度もないですね。サインしている間に、いろいろおしゃべりするのもうれしいですし。そもそも自分が本を出せるなんて思っていなかったですから、サインをしながらおしゃべりする機会をいただけるのは、本当にありがたいと思っています。
<後編につづく>
書籍紹介『平畠啓史
書籍『平畠啓史 Jリーグ54クラブ巡礼 〜ひらちゃん流Jリーグの楽しみ方〜』 【『平畠啓史 Jリーグ54クラブ巡礼 〜ひらちゃん流Jリーグの楽しみ方〜』/ヨシモトブックス 刊】
・Jリーグへの愛がほとばしりすぎて泣ける、全54クラブの魅力をつづった珠玉のコラム
・スタジアム、グルメ、イベント、おみやげ、寄り道……全チームの「おすすめTOP5」
プライベートでもスタジアムに足繁く通い、芸人イチのJリーグ通と言われている平畠啓史だからこそ知っているJリーグ全54チームの情報、魅力などを各チームごとに紹介!
縁の下の力持ち、全チームのスタジアムDJさんが一覧で見られるのはこの本だけ!
Jリーグ観戦にはかかせない一冊♪
平畠啓史本人コメント:
「選手の名前を知らなくてもオフサイドがわからなくても、Jリーグそしてスタジアムは楽しい」