魔法に導かれリスグラシューついに初GI モレイラに脱帽「なぜあんなに巧いのか」

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謙虚と向上心のマジックマン「これで終わりではない」

謙虚な姿勢を見せる一方で向上心も止まないモレイラは「ここで終わりではない」とさらなるレベルアップを目指す 【スポーツナビ】

 そんなパーフェクトな騎乗を見せてくれたモレイラなのだが、このことを鼻にかけないどころか、自画自賛すらもしない。今回は馬が強かったから勝てた、とごく当たり前に話してしまう。これだけバカスカ勝つ姿を見ていると、本当に魔法使いか何かかと錯覚してしまうのだが、この謙虚さこそが彼の持つ人間的魅力なのだろう。

「感謝でいっぱいです。本当にこのレースは、僕は乗っていただけなんです。それだけ馬の状態が良かったですし、厩舎スタッフの皆さんのおかげです。リスグラシュー自身もこれまでたまたま勝てなかっただけで、馬の能力のおかげで勝つことができました」

 そして、この勝利はリスグラシューにとってもそうなのだが、モレイラにとっても初のJRA・GIタイトル。一生忘れられないレースの1つとなるに違いない。

「言葉にするのは難しいです。本当に夢でした。日本のGIレースに勝つことは昔からの夢でしたし、こうして夢をかなえることができて本当に嬉しいですね」

 この日は淀で5勝の大暴れを見せ、区切りのJRA通算100勝も第9レースで達成。さらに、とどめのGI初勝利だから最高の1日となった。ジョッキー自身、「この楽しい時間を味わいたい」と人懐っこい笑顔を見せたが、と言って、浮かれることは決してないのだろう。すぐさま勝負師の表情に変わり、こう宣言したのだ。

「また次のGIを勝てるように準備していきたい。ここで終わるのではなく、勝ち続けていきたいですし、ファンの皆さんには長い目で応援していただきたいです。ここで終わりではありません」

外国人独占止めた藤岡佑「危機感」

マジックマンはどこまで勝ち鞍を積み重ねるのか 【スポーツナビ】

 謙虚さと向上心を同居させた“マジックマン”の魔法は、GIを制したことでますます磨かれていくことだろう。12月9日までの単騎免許期間中にどこまで勝ち鞍を積み重ねるのか、想像もつかない。そして、モレイラばかりではない。この日の京都は全12レース中、1〜11レースを外国人ジョッキーが勝利(というか、モレイラ、ルメール、クリスチャン・デムーロの3人だけで11勝を挙げた。もっと言うなら前日10日(土)の第11、12レースはミルコ・デムーロが勝っているため、この週末の京都は13戦連続で外国人ジョッキーが勝った)。最終レースで藤岡佑介が勝利し、どうにか独占だけは避けられたが、日本人ジョッキーにとっては痛恨の1日ともなっただろう。藤岡佑が言う。

「1つ勝っただけで喜んでいられないですし、この状況は情けないことだと思います。一矢報いられたことは良かったですけど、これで良しとはならない。危機感を持ってやっていきたいです」

 次週からはおなじみのライアン・ムーア、今年の英国ダービーを制したウィリアム・ビュイックと、英国トップジョッキー2人も短期免許で来日予定だ。馬券を買う側からすれば、馬券になる騎手であれば国籍は別に気にしないが、日本人ジョッキーにとっては死活問題。馬以上に熱いジョッキーたちの秋競馬が“本番”を迎える。

リスグラシュー次走は香港か有馬

リスグラシューの次走は香港か有馬記念となりそう 【スポーツナビ】

 一方、GI馬の仲間入りを果たしたリスグラシューの次走は「香港か有馬記念」と矢作調教師。秋の女王決定戦と銘打たれているとはいえ、アーモンドアイ、ヴィブロス、ディアドラら強豪GIホース不在の中での頂点だっただけに、女王としての地位が確立されたわけではない。

 ただし、トレーナーいわく、「体も減らなくなり、完成に近づいてきた」。また距離に関してもマイルから2400メートルまでこなせると見ていることから、オールマイティな女王として、どの牝馬戦線でも常に主役を演じてくれることだけは間違いなさそうだ。

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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