日本代表が苦しんだ“グレーゾーン” 世界王者オールブラックスとの差

斉藤健仁

「リアクションではなく先にアクションしないと」

後半12分にトライを決めた日本代表WTBヘンリー ジェイミー 【斉藤健仁】

 しかし、蓋を開けて見れば、オールブラックスに常に接点でプレッシャーを受けて、ボールを素早く展開できなかった。2011年、15年のオールブラックスの連覇に貢献したスティーブ・ハンセンHCが「ブレイクダウン(タックル後の密集での攻防)がこの試合のテーマの一つだった」と言うとおり、タックルした選手が日本代表側に足を向けて倒れたり、2人目のアシストタックラーが立ったままだったりと、日本の高速アタックを封じようとしてきた。

 相手の反則ギリギリのプレーにリーチ主将は、試合を通してレフリーとコミュニケーションを取り続けていたが「問題ない」と言われたという。オールブラックスはイングランド人レフリーの癖も見抜いた上でのプレー選択だったはずだ。

 先発した日本代表SH流大(ながれ・ゆたか)は「ギリギリのところがうまい。常にやっていたので、たぶん戦術だったと思う。レフリーとの兼ね合いも見ながら、僕らをスローにさせた。これがインターナショナルレベル。コーチ陣とも話したが、それを配慮できるようなボールキャリー、クリーンアウト、オーバーを練習しないといけない。リアクションではなく先にアクションしないといけない。スピーディーにボールが出て、初めて僕らのラグビーができる」と振り返った。

 ベンチから出場した経験豊富なSH田中史朗も流とほぼ同意見だった。「オールブラックスは球際がすごくうまくて、反則ギリギリでレフリーもペナルティを取れなかった。僕たちのテンポが生まれなかった。もう少しFWに頑張ってもらって、スムーズに出せるようにすればBKはやりやすくなる。相手のうまさをすごく感じた。日本代表はそこを勉強しないといけない」

日本代表の課題が明確に

ケガからの復帰戦だったが、フル出場した日本代表FL姫野和樹 【斉藤健仁】

 もう一つ、「勝つ流れ」にもっていけなかった大きな要因はジョセフHCが課題に挙げ続けている「ソフト(簡単な)トライ」が3つあった。一つは前半28分、キック後のカウンターから簡単に突破を許してCTBラウマペがトライ。前半35分、ブラインドサイドを攻められてタックルミスがあり、トライを許してしまった。

 最後の一つは、後半最初だった。日本代表はハーフタイムでやや修正し、接点でファイトして攻撃を継続し、相手ゴール前でBKを含めた10人ラインアウトというスペシャルプレーを見せようとした。しかしラインアウトが乱れ相手ボールとなり、その次のラインアウトもミスし、7分、カウンターから途中出場のWTBジョージ・ブリッジにトライを与えた(19対45)。

 もし3つのトライを防ぐことができ、逆に日本代表が1トライを挙げていれば、この時点でリード、もしくは接戦に持ち込み、相手に得点でプレッシャーを与え、「勝つ流れ」で勝負どころの時間帯に突入できたに違いない。
 ケガなどの理由でメンバーから外れたHO堀江翔太、NO8アマナキ・レレィ・マフィ、WTBレメキ ロマノ ラヴァ、FB松島幸太朗といった中軸の不在が響いた形となった。ただ、彼らがいない分、若手や新たな選手がオールブラックス戦を経験できたことは今後の糧となる。

 逆説的に言えば、31対69で大敗したことで、日本代表の課題は多いものの明確となった。ジョセフHCは試合後、時折、笑顔を見せて「チームの意気込みや意図にがっかりしているわけではない。オールブラックスから5トライを取れたことは非常に良い兆しだし、成長の証だと思っています。ティア1(世界ランキング上位の10チーム)に勝つためにはまだまだチームの強化が必要だと感じています」と先を見据えた。

 リーチ主将も前向きだった。「厳しい練習をしてきましたが、これ以上厳しくやらないといけないことがわかりました。この試合をやったことで、これからどうしていくか課題や反省点ができたので、より準備もできます。メンタリティについてはスタートから最後まで維持できたと思いますが、まだソフトなトライが多すぎるのでそこを修正したい。次はトゥイッケナムスタジアムでイングランド代表を倒して帰ってきたい」

エディーが率いるイングランドと対戦へ

試合後は両チームの選手が並んで「おじぎ」でファンに感謝した 【写真:つのだよしお/アフロ】

 過去2年、日本代表は国内で出た課題をしっかりと修正し、欧州の地ではウェールズ代表と善戦(30対33)、フランス代表と引き分け(23対23)ている。今年こそ、白星なるか。11月17日、日本代表前指揮官であるエディー・ジョーンズHCが率いるイングランド代表(世界ランキング4位)と対戦する。

 おそらくイングランド代表は来年のW杯まで日本代表が対戦する中で、オールブラックスに次いで強い相手となろう。イングランド代表は日本代表がW杯本番で対戦する欧州勢チームと同等、もしくはそれ以上の存在である。アウェイの地で、集中力を持ったディフェンスと激しい接点で今度こそ「勝つ流れ」に持ち込み、ハードワークで鍛え上げたフィットネスを武器に金星を狙いたい。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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