若い2列目を生かした「絶対的FW」大迫 真の柱になるためにやるべきこととは

元川悦子

前半36分に一時勝ち越しとなるゴールを決めた大迫 【写真:松尾/アフロスポーツ】

「ワールドカップ(W杯)ロシア大会組と新世代の融合と化学変化」をテーマに掲げた10月の日本代表2連戦。森保一監督就任後、チーム最大の得点源となっている南野拓実とともに、12日のパナマ戦と16日のウルグアイ戦で続けて先発したのが、絶対的FW大迫勇也だった。今回の代表合宿スタート直前に小林悠と浅野拓磨がそろって負傷離脱したこともあり、指揮官は絶大な信頼を寄せる最前線のキーマンの連続起用を決断した。

年長者らしく冷静にアタッカーをコントロール

「正直、(新しい選手の)ボールの持ち方やタイミング、角度が違うし、距離感もまだまだなところがあった。チームの半数以上が変わったので、そこは合わないのが普通。次は相手のレベルも上がりますけれど、その中でどう自分がトライしていくかが大事ですね」と彼は1戦目のパナマ戦後、新たな集団の中で適応していく難しさをにじませていた。

 そのハードルの高さはウルグアイ戦でも変わらなかった。新キャプテン・吉田麻也を筆頭に、長友佑都、酒井宏樹らロシアの主力メンバーが軸となった守備陣、柴崎岳と遠藤航という同い年の2人がコンビを組んだボランチとは異なり、前線アタッカー4枚の中でロシア組は大迫1人。南野とは1試合をこなしてまだ感覚がつかめているものの、堂安律と中島翔哉とはほぼ初めてだ。

「大迫選手は経験があって、前でキープもできますし、ゴール前の駆け引きも上手。ポルティモネンセにもジャクソン(・マルティネス)とか同じタイプの選手がいて、自分との相性がすごくいいので、やりやすいんじゃないかと思います」と左サイドに陣取った新背番号10は期待を口にしていたが、彼らの長所を生かしつつ自分も生きるというテーマを絶対的1トップは託された。

 開始10分に南野の先制弾が生まれ、28分にウルグアイが追いつくという出入りの激しい展開の中、背番号15も前線で体を張ってターゲットになりつつ、攻めを円滑に動かそうと試みた。その姿勢が結実した1つの形が前半34分の理想的な崩し。遠藤から大迫へクサビのパスが入り、中島、長友を経由して精度の高いクロスが入り、そこに大迫が飛び込んだ決定機だ。惜しくもシュートはジャストミートせず、枠を捉えることはなかったが、このような効果的な攻めのスイッチを入れられるのが大迫だ。そして、このわずか2分後には、中島の強烈シュートをGKフェルナンド・ムスレラが弾いたこぼれ球を拾ってゴール。6月19日のW杯ロシア大会初戦・コロンビア戦以来の得点を奪うことに成功。「こぼれてくるだろうと思って、足元を狙いました」と本人も自信をのぞかせた。

 日本は後半にも堂安と南野がゴールを奪ってウルグアイを4−3で破る金星をつかんだ。大迫は「前へ縦に行く選手が多いので、僕のところでしっかりと落ち着かせないと苦しくなる。今は勢いよくガンガン行ってもらうことが一番だと思うので、それを続けながらうまくコントロールできるようにしたいですね」と年長者らしい冷静さで、2列目アタッカートリオを操縦した。

「サコ君(大迫)は存在感があったし、ボールを収めるプレーとかを見ても、やっぱりW杯を戦っているメンバーはたくましいと感じた。僕もサコ君に入った時は周りでうまく動けたし、ビルドアップの時もお互いスペースを打ち消し合うことなくプレーできた」と殊勲の南野も大迫の援軍が力になったとしみじみ語っていた。ヴァイッド・ハリルホジッチ、西野朗、森保と指揮官が変わっても、彼の存在価値はやはり不動である。今回のウルグアイ戦はそれを再認識させる絶好の機会になったと言っていい。

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著者プロフィール

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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