グリズリーズは渡邊のどこを評価したのか
チーム関係者の言葉から読み解く“答え”

GMは渡邊のディフェンスと多才さを評価

グリズリーズのクリス・ウォーレスGMは渡邊の獲得について、大学4年間で積み上げたキャリアを高く評価
グリズリーズのクリス・ウォーレスGMは渡邊の獲得について、大学4年間で積み上げたキャリアを高く評価【Getty Images】

 チームカラーは地味でも、常に無視できない底力を備えたウェスタン・カンファレンスの強豪チーム。米国でのメンフィス・グリズリーズのイメージはそんなところだ。けが人が続出した昨季こそ、22勝60敗と大惨敗に終わったが、2016−17シーズンまでは、7年連続でプレーオフ出場を果たした。決してビッグマーケットとは呼べない町に本拠地を置き、なおかつ高レベルのウェスタン・カンファレンスでのこの成績は特筆に値する。


 そんなグリズリーズは、いったい何を求めて渡邊雄太と2ウェイ契約を結んだのか。現地時間9月24日のメディアデイでのチームメート、フロント、ヘッドコーチ(HC)の言葉から、その“答え”が見えてくるかのようだった。


「(渡邊は)さまざまなポジションでプレーできて、ジョージ・ワシントン大での4年間では素晴らしいキャリアを積み上げてきた。アトランティック10カンファレンスの最優秀守備選手に選ばれたし、サマーリーグでもブルックリン・ネッツの一員として存在感を示した。


 6フィート9インチ(206センチ)のサイズを持ち、外角でも、ゴールの近くでもプレーできる。複数ポジションの選手をガードでき、ボールもさばける。ドラフト指名されてもおかしくなかった選手だ。単にドラフトが彼の望む方向に運ばなかっただけのこと。彼と2ウェイ契約ができて、これから本格的に成長させることができる」


 クリス・ウォーレスGMがそう述べた通り、渡邊の長所は複数のポジションとマッチアップできるディフェンスと多才さだ。


 前述通り昨季は大敗を喫したグリズリーズだったが、再建体制に入るのではなく、今後も引き続き勝ちにいくという姿勢を示している。今オフ中にはオーナーのロバート・ペラが「私たちが50勝以上可能なチームに戻れない理由はない」と宣言したことが話題になった。そんなチームに、渡邊の守備力は、近未来の戦力として興味深いものに映ったということだろう。

ディフェンスに活路を見いだすグリズリーズ

マイク・コンリー(左)とマルク・ガソル(右)という2大スターを軸とするグリズリーズ
マイク・コンリー(左)とマルク・ガソル(右)という2大スターを軸とするグリズリーズ【Getty Images】

 今季のグリズリーズは司令塔マイク・コンリー、オールスターに3度選出されたマルク・ガソルという2大スターを軸に、FAで獲得した技巧派のカイル・アンダーソンを加えた3人が主力になる。ただ、オフェンス面で層が薄い感は否めない。昨季は平均19.4得点を挙げたタイリーク・エバンスが移籍したこともあり、これまで悩まされてきた得点力不足が継続する可能性が高い。


 だとすれば、やはりディフェンスに活路を見いだすのが得策ということなのだろう。守備力に定評のあるアンダーソンと契約し、昨季はNCAA(全米大学体育協会)のビッグ10カンファレンスで最優秀守備選手を受賞した、ジャレン・ジャクソン・Jrをドラフト1巡目全体4位指名した動きからも、グリズリーズ上層部の目指す方向性が見えてくる。そして、そう考えていくと、渡邊が目を付けられたのも理にかなうように思えてくるのだ。


「私たちはこれまでどちらかといえばディフェンス面で秀でたチームだった。守備は渡邊のメーンの武器でもある。このチームにフィットしてくれることを願っているよ」


 チーム編成担当のジョン・ホリンジャーが述べる通り、グリズリーズは伝統的に体を張ったディフェンス中心の戦術で知られてきたチームである。派手さはなくとも、ハードワークと泥臭さが売り物。そんなチームカラーに、献身的なプレースタイルで知られてきた渡邊も間違いなく適合するはずだ。


 さらに言えば、大都会とはいえないテネシー州メンフィスは新たにプロキャリアを始める選手にとっては過ごしやすい場所かもしれない。人々は往々にして温かく、必要以上のプレッシャーもない。自身も高校時代にメンフィスに留学した経験を持つスペイン人ビッグマン、ガソルの言葉は実に説得力を持って響いてきた。


「違う社会、違う文化に移る際にメンフィスほど良いところはないと思う。メンフィスの人々は、過去に何を成し遂げていても、成し遂げていなくても、何を達成していても、していなくても、自分自身を見てくれるし、正しい方向を向いて働く姿勢を見せれば受け入れてくれる。彼がそうしていけば、問題はないと思う」

杉浦大介
杉浦大介

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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