グリズリーズは渡邊のどこを評価したのか チーム関係者の言葉から読み解く“答え”

杉浦大介

活躍の鍵を握る「ロングジャンパーの精度」

高い守備力を持つ渡邊だが、NBAでプレー時間を確保するには、それだけでは足りない 【Getty Images】

 もっとも、プレースタイル、環境面でフィットしたからといって、渡邊の成功が約束されているわけではない。渡邊の契約はあくまで2ウェイ契約であり、チーム組織内で不可欠なメンバーとして考えられているわけではない。NBAに帯同できるのは45日間にすぎず、その間に足跡を残さなければいけないという制約もある。そして、ディフェンス以外の面では渡邊にも少なからず課題がある。

「彼のようなサイズ、スキルセットを持った選手にとって、今のNBAでは3ポイントシュートの能力が大切だ。安定した3ポイントシューターになり、大学より一段レベルの高いGリーグでも大学時代のように守備で存在感を発揮できるか。より強くなって、3ポイントシュートを磨き、全体的にプレーを磨ければ、いつかNBAでプレーできるだけの基本的な技術は備わっていると思う」

 ウォーレスGMのそんな言葉が示唆(しさ)する通り、渡邊にとっての鍵はロングジャンパーの精度だろう。カレッジ4年生時の渡邊の3ポイントシュート成功率は平均36.4%だったが、最後の8戦では同43.2%と数字を引き上げたことが評価上昇につながった。一方、ネッツの一員として参加した今夏のサマーリーグではFG成功率は41%といまひとつで、守備こそ良かったものの、平均得点は9.4と伸びなかった。

 渡邊の守備力はおそらくこのレベルでも通用するが、ディフェンスだけでNBAで安定したプレー時間を確保するのは厳しい。早い時期にGリーグからNBAへとコールアップされるためには、高確率の3ポイントシュートは不可欠。そして、ディフェンス、シュートの両方をハイレベルで安定させられたとき、世界最高のバスケットボールリーグへの定着が見えてくる。

 “複数のポジションを守れるディフェンス”、“ロングジャンパー”、“チーム重視の姿勢”をすべて備えた渡邊は、上質な“3−D”プレーヤーになる素養を持っている。グリズリーズが惹かれたのもその部分のポテンシャルだろう。そんな期待に応えるべく、攻守両面で徐々にでも結果を出していけるか。容易ではないが、1年ごとに確実に成長してきた渡邊なら、プロレベルでの着実な進歩も不可能ではないはずだ。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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