アヤックスに漂う、CL躍進の気配 歓喜に「揺れる」ホームスタジアム
吉田麻也も体感したサポーターの「威圧感」
VVV時代の吉田麻也は「まるで僕たちが勝っちゃいけないような雰囲気」とスタジアムの様子を振り返っていた 【写真:アフロ】
同じく10−11シーズン、オランダリーグの優勝争いは最終節の直接対決、アヤックス対トゥエンテに持ち込まれた。この試合でサポーターは「アヤックスが勝つのが当たり前」「トゥエンテが勝って帰るのは許さない」という雰囲気をスタジアムに作り出し、3−1というスコアを選手とともに演出した。
以前から、サポーターは薄々「このスタジアムは揺れることがある」と感じていたのだろうが、前述のディナモ・キエフ戦、トゥエンテ戦の頃からは、意図してスタジアムに揺れを作るようになった。
翌11−12シーズン、アヤックスは第33節のVVVフェンロ戦に2−0で勝利し、2季連続となる優勝を決めた。試合に出場した吉田麻也は「スタジアムが、まるで僕たちが勝っちゃいけないような雰囲気になっていた」とコメントした。そのくらい、相手チームにとっては威圧感があった。
以降、アヤックスのホームアドバンテージは大きくなった。13−14シーズンのCLグループステージでは、バルセロナを相手にDFジョエル・フェルトマンが退場し、10人で戦う苦しい展開になったが、それでも2−1で勝ち切った。
AEKアテネ戦は守備の不安を払しょくし、3−0で勝利
守備の不安が指摘されていたものの、終わってみれば3−0で快勝 【写真:ロイター/アフロ】
だが、アヤックスはGKアンドレ・オナナとFWクラース・ヤン・フンテラールを除き、9人がMFとして攻守に働き続けた。ショートコンビネーション、サイドチェンジ、ドリブルを多用し、ボールを失ったら極端にワンサイドに人を集中させたり、ボールホルダーを3、4人掛かりで追い込みボールを回収し、縦に速くショートカウンターを仕掛ける。
しかも、今季のアヤックスはフィジカルが強い。プレミアリーグの選手のような、ボリュームのある体とは違う強さだ。ルーズボールの競り合い、フィフティー・フィフティーのボールをしっかりマイボールにする強さ。しなやかさ、判断の速さを総合したフィジカルだ。
そのサッカーはモダンそのものなのだが、さらにアヤックスのサッカーには遊び心と色気がある。
2列目のレフティー3人衆、ドゥシャン・タディッチ、ハキム・ジエク、ネレスには、まるでストリートサッカーを楽しむような風情がある。しかも時折使う右足が利いている。ドニー・ファン・デ・ベークのゴールをアシストしたのは、タディッチの右足からのクロスだった。
AEKアテネのマリノス・ウズニディス監督は「ギリシャリーグとは次元の違うサッカーだった」と脱帽していた。アヤックスのサッカーはオランダの中でも異質で、欧州全体を見渡しても同じようなサッカーは見当たらない。モダンサッカーとストリートサッカーの融合、それがアヤックスだ。終盤には、デ・ヨングがプロフェッショナルファールを使って止めたシーンもあったが、ともかくアヤックスは総力を挙げて3点を奪い、相手を零封した。
そして、思う。このヨハン・クライフ・アレーナの雰囲気は、ELで決勝まで進んだ16−17シーズンの対コペンハーゲン(2−0/ラウンド16)、対シャルケ(2−0/準々決勝)、対リヨン(4−1/準決勝)と似通っている。今季のヨハン・クライフ・アレーナは、CLプレーオフから、異様な盛り上がりを見せている。
もしかしたら、やっと時代がヨハン・クライフ・アレーナに追いついたのかもしれない。そう思いながら、私はAEKアテネ戦を振り返るのだ。