「ポスト・バルサ時代」を迎えたスペイン  エンリケが進める変化への第一歩

チームの大半をレアルの選手が占めるように

セルヒオ・ラモス(右)やアセンシオら、レアル・マドリー勢がチームの大半を占める 【写真:ロイター/アフロ】

 ジエゴ・コスタやアルバロ・モラタ、ロドリゴ、イアゴ・アスパス、アセンシオ――。これまでスペインは、よりテクニカルなMFを多く中盤に並べることを優先してきたため、多くの優秀なストライカーを持て余してきた。だが、その中盤に長らく君臨してきたシャビやイニエスタ、シルバらを失った今後は、より多くのストライカーを生かしたシステムへと傾倒していくのが自然な流れだと言える。

 近年、スペインはその美しいプレーによって見る者を魅了してきた。だがその傍らで、圧倒的なゲーム支配をスコアに反映させられないという欠点も抱え続けてきた。その一因は得点力に優れたストライカーの起用を重視せず、タレント性はあるがゴールのスペシャリストではないMFたちにフィニッシュ役を任せてきたことにあった。

 ルイス・エンリケ率いるスペインは、以前より横パスとボールポゼッションが減少した一方、より前線のFWを使った攻撃を仕掛けるようになった。数年前まで最大勢力だったバルセロナ勢の生き残りはセルヒオ・ブスケッツとセルジ・ロベルトのみとなり(ジョルディ・アルバの処遇については現時点では結論を出しかねる)、元所属を含めたレアル・マドリー勢(セルヒオ・ラモス、ダニエル・カルバハル、ナチョ・フェルナンデス、ラウール・アルビオル、マルコス・アロンソ、ダニ・セバージョス、イスコ、アセンシオ、モラタ、ロドリゴ)がチームの大半を占めるようになった。

 繰り返すが、ベースとなるプレーコンセプトは変わっていない。そもそもルイス・エンリケは選手として、監督として、バルセロナと強いつながりを持ってきた男である。

 しかし、バルセロナをベースとしてきたチームのサイクルは終えんを迎えようとしている。再び人々に希望の火を灯すためには、新たな選手たちとともに、新たな時代の幕を開ける必要があるのだ。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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