奈良くるみ、安定とは進化を続けること グランドスラム連続出場「21」が示すもの

内田暁
 女子テニスの国際大会「花キューピットジャパンウイメンズオープンテニス」の本戦が9月10日から16日、広島県・広島広域公園テニスコートで行われる。

 大会に臨む日本女子プレーヤー紹介連載の最終回は、奈良くるみ(安藤証券)。現在の世界ランキング99位(2018年8月27日付)、自己最高は32位。グランドスラム21大会連続出場。一定の成績を残し続ける彼女には以前、トップ100の壁を破れずにもがいた時期があった。

トップ100の壁を破るまでの自問自答

2018年の全米オープンで、21大会連続のグランドスラム出場を果たした奈良くるみ。この記録は安定した成績を残している証明でもある 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 先の全米オープンで、グランドスラムの連続出場記録を“21”まで伸ばした。それは足掛け5年間、奈良くるみが、大きなけがや成績の浮き沈みもなく、世界の一流の指標である“トップ100”にいることを意味している。

「彼女ほど、やるべきことをきちんとやる選手はいない」

 奈良をよく知る選手や関係者たちから、幾度もこのような言葉を聞いた。確かに彼女は、そこがグランドスラムだろうが、あるいはランキングを維持するために出場した下部大会だろうが、試合前には変わることのないルーティーンを、変わることのない真剣味と情熱でこなしていく。まだ26歳ながら、既にプロ9年目。

「みんなが“ベテラン”って言うので年食った気になるんですが、まだ20代半ばなんだけれどな〜」

 少しすねたように口をとがらせる愛くるしい表情は、まだまだ少女の面差しだ。

 安定感――奈良の強みを一言で表すなら、そのような言葉になるのかもしれない。だが実際の彼女のキャリアは、変化と改新の継続により織り上げられている。
 小学生の頃から“天才少女”と呼ばれた奈良は、18歳時にグランドスラム本戦に出場し、ランキングも101位まで急上昇した。だがそこからの3年間、100位の壁を突破できず、グランドスラム本戦にも手が届かない日々を過ごす。そしてその苦しい年月こそが、「自分のテニスとは何か? 自分は何で今まで勝ってきたのか?」と自問自答を繰り返し、今の彼女の礎(いしずえ)を築く期間となった。

「ある時からガラッと変わりましたね、考え方というか、自分のテニスに向き合う姿勢というか」

 26歳になった今、奈良は4〜5年前の自身を追想する。

「それまではコーチについていくだけだったのが、それでは勝てないというのが分かったので」

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著者プロフィール

テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。京都在住。

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