連載:ジャパンウイメンズテニス注目選手たち
奈良くるみ、安定とは進化を続けること グランドスラム連続出場「21」が示すもの
大会に臨む日本女子プレーヤー紹介連載の最終回は、奈良くるみ(安藤証券)。現在の世界ランキング99位(2018年8月27日付)、自己最高は32位。グランドスラム21大会連続出場。一定の成績を残し続ける彼女には以前、トップ100の壁を破れずにもがいた時期があった。
トップ100の壁を破るまでの自問自答
2018年の全米オープンで、21大会連続のグランドスラム出場を果たした奈良くるみ。この記録は安定した成績を残している証明でもある 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】
「彼女ほど、やるべきことをきちんとやる選手はいない」
奈良をよく知る選手や関係者たちから、幾度もこのような言葉を聞いた。確かに彼女は、そこがグランドスラムだろうが、あるいはランキングを維持するために出場した下部大会だろうが、試合前には変わることのないルーティーンを、変わることのない真剣味と情熱でこなしていく。まだ26歳ながら、既にプロ9年目。
「みんなが“ベテラン”って言うので年食った気になるんですが、まだ20代半ばなんだけれどな〜」
少しすねたように口をとがらせる愛くるしい表情は、まだまだ少女の面差しだ。
安定感――奈良の強みを一言で表すなら、そのような言葉になるのかもしれない。だが実際の彼女のキャリアは、変化と改新の継続により織り上げられている。
小学生の頃から“天才少女”と呼ばれた奈良は、18歳時にグランドスラム本戦に出場し、ランキングも101位まで急上昇した。だがそこからの3年間、100位の壁を突破できず、グランドスラム本戦にも手が届かない日々を過ごす。そしてその苦しい年月こそが、「自分のテニスとは何か? 自分は何で今まで勝ってきたのか?」と自問自答を繰り返し、今の彼女の礎(いしずえ)を築く期間となった。
「ある時からガラッと変わりましたね、考え方というか、自分のテニスに向き合う姿勢というか」
26歳になった今、奈良は4〜5年前の自身を追想する。
「それまではコーチについていくだけだったのが、それでは勝てないというのが分かったので」