連載:ジャパンウイメンズテニス注目選手たち
奈良くるみ、安定とは進化を続けること グランドスラム連続出場「21」が示すもの
自分の“武器”とは何か
世界各地を飛び回り、勝負するプロテニスの世界。奈良が大事にしているのは、日々の成長だ 【写真:田村翔/アフロスポーツ】
その迷いの中で「自分は何で世界と戦えるのか?」と考えた時、たどり着いたのは“足”と“頭”。
そこでフィジカルを鍛え、フットワークを見直し、戦術への理解度を高めることで、揺るがぬ基盤を築きあげた。以降は、強固な土台に建てた家を改築・増築するように、トップ選手たちのプレーや練習を見ては、「いいな」と思った技術を取り込んでゆく。
「自分で自分のテニスを作るのが楽しくなった。結果を追うのやめようと思ったら、結果が出るようになりました」
その時が、彼女のキャリアにおける最初の大きな転機となる。21歳の時だった。
目標は、昨日よりも成長すること
「どんなに1回戦負けが続いても、頑張れる、楽しいと思えるのが、一応私の強みなのかな……?」
幾分恥ずかしそうにしながらも、そう言う彼女の声に迷いはない。自分の武器を知っているという自信。そして、「彼女のサーブはいいな」「あんな柔らかい手のタッチが自分にもあればな」と、今も少女時代と変わらぬ無垢(むく)な視線を周囲に向ける謙虚さ――ともすると相反するそれら2つの情意を両輪として、彼女はこの5年間、成長を続けてきた。
今の彼女は、フィジカルをより向上させることで、自ら攻めてネットにも出る、次なるレベルに自身のテニスを昇華させている。
安定とは、決して現状維持ではない。1年前よりも進化した奈良くるみのプレーが、今年も秋の日本で見られる。