連載:ジャパンウイメンズテニス注目選手たち
“良い子”からの脱却――穂積絵莉の選択
全仏複準V、シングルスでも勝つために

 女子テニスの国際大会「花キューピットジャパンウイメンズオープンテニス(以下、JWO)」の本戦が9月10日から16日、広島県・広島広域公園テニスコートで行われる。


 大会に臨む日本女子プレーヤー紹介連載の第4回は、今年6月の全仏女子ダブルスで二宮真琴とともに準優勝を果たした穂積絵莉(ともに橋本総業)。ダブルスで結果を残す一方、シングルスでは苦しい戦いが続いていた穂積。そんな中で彼女がとった選択は、コーチの変更。コーチの言いつけを守り、「責任を取ることから逃げていた」状況をまず変える事だった。

評判は、子供の頃から「しっかり者」

全仏女子ダブルス準優勝など、ダブルスで高い結果を出し続けている穂積絵莉。しかし彼女は環境の変化を選択した。シングルスでも勝つために
全仏女子ダブルス準優勝など、ダブルスで高い結果を出し続けている穂積絵莉。しかし彼女は環境の変化を選択した。シングルスでも勝つために【写真:アフロ】

 同期の選手間で、あるいは関係者たちの間でも、彼女はいつも「しっかり者」「大人っぽい子」と言われてきた。取材時の言葉遣いや受け答えにも、その定評は映し出される。


「小さい頃から、『子供っぽくないね』と言われるのが、何よりうれしかったんです」。24歳になった今、穂積絵莉は、ちょっとした“種明かし”をしてくれた。


 幼い頃の穂積は、感情を、特に不機嫌な心の内を、顔や態度にすぐに出す方だったという。だが「やっぱり一人っ子はわがままだね」という周囲の声が耳に入った頃から、意識的に自分を変えようとする。


 直情的にならず、常に冷静に振る舞うオトナな女性――思い描くそんな理想像を、彼女はいつからか演じるようになっていた。


 8歳で始めたテニスにおいても、それはどこか同じだったかもしれない。コート上で、感情的になることも多かった幼少期。だが周囲の同世代を見渡した時、試合中に怒りやいら立ちをあらわにする選手は、実力を出しきれず負けていることに気付く。


「やっぱり感情は出さず、たんたんとやった方が良いんだ」


 子供ながらにそう思い、ここでも彼女は、自分を律した。ベースラインからの安定したストロークを軸とするプレースタイルにも、そんな“心の正し方”はプラスに寄与しただろう。ジュニア時代にまずダブルスで頭角を現した穂積は、プロ転向翌年の19歳時には、シングルスで全日本選手権を制する。彼女と同じ1994年生まれには、才能豊かな個性派がずらり顔をそろえるが、穂積はそれら同期の出世頭でもあった。


 シングルスとダブルスを「どちらも同じくらい大切」ととらえる穂積は、テニスの最高峰であるグランドスラムやWTAツアーでも、ダブルスで次々に戦果を挙げる。2016年には、同期の加藤未唯(ザイマックス)と組んでツアー優勝。翌年の全豪でも加藤とともにベスト4入りし、今年6月の全仏では、やはり同期の二宮と組んで準優勝にも輝いた。

内田暁

テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。京都在住。

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