ラ・リーガはこれからどこへ向かうのか  VAR導入も、議論すべき課題は山積み

VAR導入により認められたゴール

エステバン・グラネロの直接FKは、VAR判定によりゴールと認められた 【Getty Images】

 現地時間8月26日にRCDEスタジアムで行われたエスパニョール対バレンシア戦。後半17分、エステバン・グラネロの直接FKがクロスバーの下側にあたり、ゴールライン上でワンバウンドして外に出た。カルロス・デル・セッロ・グランデ主審はVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の確認を待った後、ゴールと判定。これが今季、ラ・リーガがVARを導入して以降、初めて認められたゴールとなった。

 待ち望まれたテクノロジーの導入は、ラ・リーガにとって大きな進歩である。だがスペインフットボール界が本当の意味で成長するため、そして将来的に大きな問題が生じることを避けるためにも、ラ・リーガの運営には議論を重ねていくべき側面がいくつもある。

 実際のところ、ボールがゴールラインを割ったかどうかを判断するのに最適なのは「ホーク・アイ」と呼ばれるゴールライン・テクノロジーであり、ラ・リーガが導入したVARではない。

あくまでも“主審が”最終的な判断を下す

W杯でも導入されたVAR。FIFAのスタンスはあくまでも、“主審が”最終的な判断を下すというもの 【写真:ロイター/アフロ】

 一方でラ・リーガは、ワールドカップ(W杯)ロシア大会においてFIFA(国際サッカー連盟)が「ホーク・アイ」を用いたのと全く同じ基準でVARを活用しているわけでもない。W杯期間中、FIFA審判委員会のピエルルイジ・コリーナとマッシモ・ブサッカは2度にわたって記者会見を開き、最終的な判定を下すのは常に主審であって、VARが判定を強いることはないと明言していた。

 前述のバレンシア戦でグラネロが決めたようなゴール、またPKやゴール時にオフサイドの可能性がある場合、テクノロジーそのものが判定を覆すのではなく、VARの判定という意見を受けた主審が映像を確認した上で、自らの判断で判定を決する。それがFIFAのスタンスだ。

「VARを導入すれば、レアル・マドリーに与えられるPKは少なくなるはずだったが……」

 レアル・マドリーがPKによる2ゴールで逆転勝ちしたジローナ戦の後、レアル・マドリーの広告塔として知られるスポーツ紙は皮肉を込めてそう伝えていた。確かに2つのPK判定はいずれも妥当なものだった。ただ同じ試合では、わずかにオフサイドポジションにいたと思われる、カリム・ベンゼマのゴールが認められている。結局全ては主審の解釈次第となるわけだが、FIFAはあくまでも主審が最終的な決断を下すよう指示している。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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