池江璃花子が見せた6日間での急成長 アジア大会6冠を生んだ心のコントロール
池江はアジア大会で前人未到の6冠を達成。自己ベスト更新こそならずも、4つの大会記録をマークし圧倒的な存在感を見せた 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】
全8種目に出場し、50メートルと100メートルの自由形とバタフライの4種目は大会新記録で優勝。さらにリレーにも4種目出場。4×100メートルリレーでは3分36秒52、4×100メートルメドレーリレーは3分54秒73のそれぞれ日本新記録で優勝を果たし、史上初の日本勢1大会6冠を達成。これは、1970年のタイ・バンコク大会、74年のイラン・テヘラン大会の2大会連続で5冠を果たした、村山(旧姓西側)よしみの記録を上回る快挙だった。
今までにない疲労の中で戦った6日間
4×100メートルリレーを皮切りに出場8種目すべてでメダルを獲得した池江。しかし笑顔とは裏腹に連戦による疲労が蓄積されていた 【岡本範和】
初日の4×100メートルリレーでは、第1泳者で泳いだ池江は、53秒60で第2泳者に引き継ぐ。個人としての記録はそれほど速いわけではなかったが、トータルで中国に競り勝ち、最初の金メダルを手にした池江。
2日目は、個人種目が2つとハードなスケジュールのなか、まずは50メートルバタフライを25秒55の大会新記録で制し、その40分後、100メートル自由形も53秒27の大会新記録を樹立して優勝した。
「まずは、今日の2種目を勝つことが目標でもあったので、それが達成できて良かったです。ダウンしている途中から、(種目間の)時間がないことすら楽しく思えてきちゃって(笑)。2つ目の100メートル自由形も、結構リラックスして泳ぐことができました」
ここまでは、いつもの池江だった。だが大会3日目、100メートルバタフライの予選を終えたあとに後ろ向きな言葉が、口をついて出てしまった。
「身体が全然動かなくて、今までにないくらい疲れがきているというか。身体が全く動かない状態まできています。自分では分からないところで、疲労が蓄積されていたのかもしれませんし、ウォーミングアップから身体が重いな、という感じはありました」
表情を見ていても、いつものはつらつとした池江の表情ではなかった。慣れない東南アジアという環境に加え、パンパシフィック水泳選手権からの連戦の疲れが、明らかに池江の身体をむしばんでいた。