アジア大会に挑む侍J社会人代表の面々 ライバルは年収差14倍の韓国プロ
監督がエースに指名する岡野
アジア大会に挑む侍ジャパン社会人代表投手陣。左から岡野、堀、佐竹、勝野 【ストライク・ゾーン】
世界的にはマイナースポーツの野球。オリンピックでは2008年の北京大会を最後に種目から外れ、2年後の東京五輪で復活するも参加するのはわずか6チームだ。アジア大会ではかろうじて毎回実施され、今回も10チームが参加するが実力差は大きく、実質、トッププロが参加する韓国を日本と台湾が追うという3チームでの争いになっている。
この戦いに、1994年広島大会以来24年ぶり2度目の金メダルを目指す日本は社会人野球から選抜されたメンバーで挑む。いずれも7月に行われた都市対抗に所属チームまたは補強選手として出場した面々だ。顔ぶれに突出した存在こそいないが、実力者がそろっている。
投手陣は8人。「日本らしい守りの野球」をテーマに掲げる石井章夫監督(元東京ガス監督)がエースに指名するのが岡野祐一郎(東芝)だ。速球に加えて、フォーク、カットボールを低めに投げ込む右腕は、19日の東京ガスとのオープン戦に先発。4回を先頭打者への1四球に抑える好投を見せた。「試合はピッチャーで決まる。粘り強く投げるのがテーマ」とエースの自覚を持つ落ち着き払った24歳が柱となる。
先発には堀誠(NTT東日本)、そしてチーム最年長34歳、社会人野球の“レジェンド”佐竹功年(トヨタ自動車)の両右腕が名を連ねる。独特の小さなテイクバックから巧みな投球術で抑える佐竹は21日の千葉ロッテ2軍との試合に先発し、毎回走者を出しながらも4回を0点に抑える貫録の投球を見せた。
アジア大会には4年前に続いて2度目の出場となる佐竹は「“自分が”というのはない。常にチームのため」と話し、練習では手薄な二塁に入り野手を鼓舞。ベンチでは誰よりも大きな声で前向きな言葉を送りチームを盛り上げている。
リリーフには物おじしない速球派、最年少21歳の勝野昌慶(三菱重工名古屋)らが、「一戦必勝」を信条に総力戦で挑む。21〜34歳までの投手陣を束ねるのは、視野が広い正捕手の木南了(日本通運、26歳)だ。
中軸は近本、笹川の94年コンビ
侍ジャパン社会人代表の打線の中軸を担う笹川(左)と近本はプロも注目 【ストライク・ゾーン】
そして不動の4番が右の笹川晃平(東京ガス)だ。長打力に加え、守っては強肩、走塁のセンスもあり、国際大会の経験も多い。所属チームでも4番を務め、責任を背負うことに慣れている笹川は「自分が稼働することで周りを良くしたい」と爽やかな表情で話す。近本と笹川は前回日本が金メダルを獲得した1994年に生まれた同学年。この左右の仲良しコンビが打線をけん引する。
石井監督は「予選では打線は固定しない」と話し、現地で調子が上向いた選手が中軸の前後を務める。がっしりとした下半身からパワーを貯めこんで強い打球を放ち、一塁守備では柔らかなハンドリングを見せる喜納淳弥(NTT東日本)や、ヘッドを利かしたスイングで野手の間を抜き、俊足も特徴の松本桃太郎(ホンダ鈴鹿)の両左打者も重要な役目を担う存在だ。
「小さなミスが勝敗を分ける」
トッププロが揃う韓国との戦力差は歴然だが、06年のドーハ大会では当時日本大4年の長野久義(巨人)が呉昇桓(元阪神/ロッキーズ)からサヨナラ3ランを放つという番狂わせもあった。推定年収400万円(25歳平均)の社会人野球の選手が、約14倍の5500万円(代表チーム平均)を稼ぐ韓国を倒す可能性はゼロではない。
元西武投手の石井貴氏(四国IL・徳島監督)の実兄で、選手、指導者として長年社会人野球に携わってきた石井監督は今大会について「韓国、台湾からそうは点を取れない。小さなミスが勝敗を分けるだろう。アジアでトップになれたら選手にとって財産となり自信にもなる。社会人野球の強みを出して、社会人野球が注目されるきっかけになれば」と口元に力を込めた。
出国直前に大リーグ挑戦の意志があるとされた吉川峻平(パナソニック)が出場を辞退し、波乱のスタートとなった侍ジャパン社会人代表。しかし石井監督は「23人でも精一杯戦って金メダルを目指して戦う」と決戦の地に乗り込んだ。
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