ツイッターをクラブ運営に活用する 「IT活用でJクラブは変わる」第3回

えとみほ(江藤美帆)

第3回はTwitterの活用についてお話しします 【(C)J.LEAGUE】

 こんにちは、えとみほです。前回は、Jリーグクラブの求人事情とビジネスSNS「Wantedly」を使った栃木SCのスタッフ募集についてご紹介しました。今回はTwitter(ツイッター)の活用についてお話ししたいと思います。

栃木SCのソーシャルメディア活用状況

 Jリーグクラブのソーシャルメディア活用といえば、Twitter・Instagram・Facebook・LINE・YouTubeなどの公式アカウントを使ったファン・サポーター向けの情報発信が浮かぶと思います。私もサポーターだった頃は、お気に入りのクラブの公式アカウントは全部フォローして、日々情報を受け取っていました。もはやサポーターは、スタジアムに来て試合を見る時間よりも、ソーシャルメディアを介してクラブと接触する時間のほうが長くなっていると言われています。各クラブその状況を認識しており、予算にゆとりのあるクラブを中心にSNSの運用にリソースを割くところが増えてきました。

 もちろん栃木SCでも、私が入社する前からこれらのSNSアカウントの運用を行っています。ただ、各SNSの特性を生かした運用までできているかというと、まだその域には達していません。というのも、栃木SCは2015年シーズンにJ2最下位となり、J3に降格したときに広報担当を2名から1名に減らし、J2に昇格した現在も実質1名体制のままきているからです。J2クラブの大半が2〜3名で広報とSNS運用を回していることを考えると、メディア対応だけで手いっぱいで到底SNS運用までは手が回りません。今の状態ですべてのSNSを満遍なく運用しようとしても、逆に全部が中途半端になってしまうだろうと考えました。

重要なのは「何をやらないか」を決めること

 このようなリソース不足の状況は認識していたので、私はSNSの施策を決める前に、まず「やらないこと」を決めました。最初に決めたのは、フォロワー数を増やすことを“現段階では”目指さない、ということです。フォロワーを増やすということは「新規のファンを獲得する」ということになるのですが、企業の公式アカウントがこれをやろうとすると膨大なお金と手間がかかります。ですので、当面の間はTwitterもFacebookもLINEも、従来どおり既存のファン・サポーターに向けてクラブからのお知らせを配信する、というオーソドックスなやり方にとどめることにしました。

 その代わりと言ってはなんですが、ツイッターのプロフィールにこんな文言を追加しました。

【提供:江藤美帆】

「ハッシュタグ #栃木SC をつけてツイートしてもらえたら、クラブスタッフがそれを見て運営の参考にしますよ」というメッセージを追加したのです。

Slackで日々「ファンの生の声」を共有

 プロフィールにこの文言を追加してから、 #栃木SC の言及数(ハッシュタグの数)は1.5倍、2倍と増えていきました。一部のサポーターの方が「 #栃木SC をつけてツイートするとクラブに声が届くらしい」ということに気づきはじめ、他の方や他クラブのサポーターの方にも利用していただけるようになったからだと思います。

 ハッシュタグのついたツイートは、私が毎日巡回して「これはみんなに伝えたほうがよい」と思ったものをスクリーンショットし、Slack(連載第1回で紹介したビジネスチャットツール)の「ご意見」というチャンネルに流しています。

 たとえば、先日のモンテディオ山形戦では「炎のカリーパン」という名物スタジアムグルメの公式マスコット「ペッカくん」が来場したのですが、その際にこんなツイートが流れてきました。

【提供:江藤美帆】

 確かに、弊クラブのフードエリアは「ビストロトッキー」という名前なのに、私もトッキー(栃木SCのマスコット)を見たことがありませんでした。言われてみれば、それもおかしな話だなと思ったので、早速担当者に相談し、当日トッキーのスケジュールを調整して無事ペッカくんと引き合わせることに成功しました。

※リンク先は外部サイトの場合があります

【提供:江藤美帆】

 これはライトな要望ですが、ときには炎上騒ぎに発展しかねないようなクレームもあります。先日は、アウェーサポーターの方からこんな投稿をいただきました。

【提供:江藤美帆】

 おむつ交換台がアウェーゴール裏エリアになく、ホーム側を使わせてもらえるか確認したら「アウェーグッズを身につけている方が利用できるおむつ台はありません」と言われた、というものです。ツイートを見た瞬間「これはまずい対応だな」と思い、個人アカウントからこの方にお詫びすると同時に、即座にSlackで全社員に共有しました。

 あいにくこの投稿があった日はお盆休みの初日でしたが、Slackでスムーズに情報共有ができたため、すぐに社長に話が通り、アウェーゴール裏エリアにもおむつ交換台を置くスペースを確保することが決まりました。もちろん、次のホームゲーム前には運営関係者全員にこの話が共有されたので、今後同じことは起こらないだろうと思います。

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著者プロフィール

Jリーグ・栃木SC、マーケティング戦略部長。外資IT企業、大手ネット系広告代理店勤務などを経て、スマホで写真が売れちゃうアプリ「Snapmart」を開発、ピクスタ100%出資子会社のスナップマート株式会社の代表取締役に就任。2018年3月に代表を退任し、5月より現職

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