ツイッターをクラブ運営に活用する 「IT活用でJクラブは変わる」第3回

えとみほ(江藤美帆)

栃木SCがソーシャルリスニングに取り組む理由

 このようにソーシャルメディアから顧客の声を拾うことをマーケティング用語では「ソーシャルリスニング」と言います。私がなぜこのソーシャルリスニングに取り組もうと思ったかというと、一般的に企業にとって長くお付き合いを続けたい「優良な顧客」ほど、文句も言わずにいなくなってしまうものだからです。そして、そんな彼らが本音をポロっと漏らすのが、ツイッターをはじめとしたソーシャルメディアなのです。

 企業と顧客の関係に限らず、すべての人間関係において同じことが言えると思うのですが、人が離れていくときは必ずその前に「サイン」があります。そのサインを見逃してしまうと、不満がどんどん蓄積されていき、気づいたときにはもう取り返しのつかない状態になっていることがよくあります。われわれサッカークラブというのは、ファン・サポーターとは単なる「サービス提供者と顧客」の関係ではなく、ともに戦う仲間だと私は考えています。であるならば、不満の芽が育つ前に摘み取るためにも、コミュニケーションはどんどんとるべきでしょう。

 ただ、クラブの公式アカウントが1つ1つの意見や要望に応えるのは現実的ではありません。うちのような小さなクラブならまだしも、大きなクラブになると寄せられる意見も膨大です。そう考えたときに、ハッシュタグを介した緩やかな意思疎通というのは、お互いにとって都合のいいものになります。サポーター側はあくまで独り言としてツイートできるので発言のハードルが低く保たれますし、届けたい意見だけをクラブに届けることができます。クラブ側からしても「全部に返信する」のは無理でも「ハッシュタグがついた投稿には全部目を通す」ならどうにかなります。私も実際にやってみて、これならば無理なく続けられのではないかと思いました。

たまにはフロントスタッフだって褒められたい!

 ちなみに、ソーシャルリスニングをしているのには、もう1つ重要な理由があります。それは、私たちフロントスタッフ自身のモチベーションアップのためです。

 実は先ほど紹介したSlackのご意見チャンネルには、要望やダメ出しだけでなく、サポーターからのお褒めの言葉やポジティブな感想も流しています。というのも、私たちフロントスタッフの仕事は、お叱りを受けることは多々あっても褒められることがあまりないからです。とくに試合の運営スタッフは「何事もなく無事に試合が終了すること」がゴールなので、普通にしていたら褒められる機会がほとんどありません。この点は、選手がうらやましいなと思います。

 しかし、中にはそんな運営スタッフの気持ちをおもんぱかってか、運営の小さな改善点に気づいてツイートをしてくださる方がいらっしゃいます。そういったサポーターの方のご意見や、アウェーからはるばる来られて「スタグルおいしかったよ」「また来るね」と言ってくださる方のツイートを拾って、みんなのやる気を引き出しています。

【提供:江藤美帆】

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著者プロフィール

Jリーグ・栃木SC、マーケティング戦略部長。外資IT企業、大手ネット系広告代理店勤務などを経て、スマホで写真が売れちゃうアプリ「Snapmart」を開発、ピクスタ100%出資子会社のスナップマート株式会社の代表取締役に就任。2018年3月に代表を退任し、5月より現職

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