松岡修造から、全米に臨む錦織へのエール 優勝の大チャンス“自分破り”で道を拓け

内田暁

能力高いダニエル太郎「僕だったら対戦するのはイヤな選手」

松岡さんは、ダニエル太郎(左)の実力を評価 【ゲッティ=共同】

 今回の全米には、錦織以外にも男子ではダニエル太郎(エイブル)や杉田祐一(三菱電機)に西岡良仁(ミキハウス)、女子も大坂なおみや奈良くるみ(安藤証券)ら多くの日本勢が出場する。それら日本人選手の中で、松岡氏が特に注目しているのは?

「大坂なおみ選手とは、今回フロリダで会ってロングインタビューもしてきました。彼女のインタビューはどうしても一問一答になってしまいがちなのですが、そこを『どうして?』『なんで?』と質問を重ねるなかで一つ分かったのは、彼女の魅力は、“何をするか分からない”ところ。そこが彼女の魅力です。

 その彼女が最近、少し型にハマる方向になりつつある。フォアのストロークは、すごく良くなりました。コンパクトで、しっかりスピンをかけて。ただその分、怖さが消えた部分もあります。
 僕はよく“なおみキャンドル”と例えているんですが、心の炎が燃えている時の彼女は、相手が世界1位だろうが関係ない。誰も太刀打ちできない選手です。でもその炎が消えると、世界1000位の選手にも負けかねない。なおみさん本人は、まだ本当の意味でのテニスというゲームを知らないんだと思います。そんなトップ選手、初めて会いましたよ! でもそこが魅力だと思います。

 今回の全米で優勝しても、僕は全く驚きません。世界中の解説者も、彼女を優勝候補に入れているし、プレースタイルと才能を考えれば可能性は十分あります。

 男子では、西岡選手や杉田選手にもベスト16や8に行って欲しいし、可能性はあると思います。ただ冷静に考えると、世界のトップに行ける力があるのは、間違いなくダニエル太郎。彼ほど動けて、正確性がありミスをしないという3要素がそろっている選手は、トップ100にもなかなかいません。今年はプレースタイルも変えて攻撃していくようになりました。攻めるテニスを手に入れたのですから、もっと上に上がってもおかしくない。
 ただ、ダニエル選手のメンタリティーは、徐々に一歩ずつ確実に進む“亀”なんです。そこが彼の良いところです。亀でも、5歩くらい一気に前進する時もある! その亀になって欲しい。彼ならなれます。僕がダニエル太郎と対戦したら、すごくイヤですから」

トップ100はすごい事 でも「僕はまだ錦織圭を称えてはいけない」

全米オープンは27日開幕。選手たちの活躍に期待だ 【スポーツナビ】

 グランドスラム本戦の舞台で戦う選手の数は、男女ともに128人。これは一見すると多い人数のようにも映るが、テニスという世界中で愛される競技においては、ほんの選ばれし一握りでもある。
 彼らが戦うグランドスラムとは、そして“世界のトップ100”とはいかなるステージなのだろうか? かつてその地位に身を置いた松岡氏が、過去と現在を透写し語る。

「僕が言うと言い訳じみてしまいますが、僕の時代は、日本人男子がトップ100に入るのは、ありえないことだと思われていました。一方で女子では、グランドスラム本戦に10人以上出ていた時もあったので、トップ100は当然だと思われていました。それが今はグッと少なくなった。時代も違うので、トップ100の価値を簡単には定義できないです。
 僕はいろいろなスポーツを見てきたなかで、それぞれ素晴らしいし、大変だとも感じてきました。ただ一つテニスが特殊なのは、全世界で一つの共通ランキングシステムがあること。アジアで頑張れば良いということでもなく、世界につながっている。その指標が賞金だと思います。賞金は、グランドスラム初戦で破れても500万円ほどもらえるなど、とんでもない額になっています。それだけ、放映料も含めて全世界で評価されているスポーツだということです。

 100位に入ることは、すごいと言いたいです。それでも僕は言いません。錦織圭がその感覚や常識を変えましたから。
 錦織圭が今居る場所もすごいし、たたえたい。でも僕自身は、まだ彼をたたえてはいけない人間だと思います。なぜなら僕は、彼がグランドスラム制覇できると信じているから。誰よりも信じています。
 可能性は本当にある。夢ではない。それをできるかどうかは、圭自身も言っているように「自分破り」なのでしょう。圭が負ける時は、相手にではないです。相手よりも、自分に負けていた。なのでそこを……自分破りをしてほしい。錦織圭が錦織圭を破った時に、グランドスラム優勝が見えるはずです」
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■全米オープンテニス
8月27日(月)〜9月10日(月)WOWOWにて連日独占生中継
※第1日無料放送
※第5日ナイトセッション(9月1日土曜日の7時30分〜15時)無料放送

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著者プロフィール

テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。京都在住。

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