井手口はリーズで「構想外扱い」なのか ビエルサの言葉から読み解く立ち位置
藤田俊哉氏が語る、井手口の現状とこれから
藤田氏は井手口に対し「ちょっと踏ん張れば、すぐ手が届くところにある」とエールを送った 【写真:Shutterstock/アフロ】
藤田氏は取材日の前日に日本からイギリスに戻ってきたこともあり、井手口の状況について、詳しくは分からないと前置きした上で、次のように話した。
「井手口にはここで頑張ってほしいと思っている。でも、海外で生き抜くメンタリティーをもう少し養わないといけない。チャンスがあるのなら、ここで勝ち抜いてほしい。日本人の選手で海外のクラブ行ってVIP(扱い)されている選手はいない。日本人はアジャスト(適応)するまでの時間がどうしてもかかる。欧米の選手のように、(イングランドに来てすぐに)サッカーができる日本人は稀(まれ)だから。言葉も生活もプレーも、全部に順応することが必要になる」
さらに藤田氏は、欧州でプレーする難しさを訴えてエールを送る。
「私生活はいくらでも(サポートが)できるけれど、ピッチに入ったらどの世界でも自分で解決しないといけない部分がある。そういう難しさを分かったうえで、海外に来たと思うから、やっぱり自分で踏ん張るしかないと思います。僕の考えは少し厳しすぎるのかもしれないけれど、あまり過保護になりすぎても生きていけない。
ヨーロッパで活躍している選手たちが、全員が全員、恵まれた環境でやり始めたかというと、そういうわけではないと思うので。(長い)時間をかけて見てあげるということも大切だけれど、頑張ってほしい。こんなチャンスはない。(リーズは)素晴らしいスタジアムがあって、トレーニングもいいし、良い監督も来た。ちょっと踏ん張れば、すぐ手が届くところにあるわけだから」
リーズの試合を取材している中で感じるのは、井手口がプレー面で通用していないようには見えないことだ。イングランドらしく1対1の局面で激しさを追求しながらも、ビエルサ監督の下でポゼッションを重視してパスをつないでいる。ボールテクニックに優れ、デュエルの強さと強烈なシュート力を有する井手口なら、存在感を示せる可能性は十分にあるだろう。好調時の井手口ならフィットできると、藤田氏もそう感じているからこそ、「ここが踏ん張りどころ」と力を込める。
リーズ残留か、移籍か。井手口の決断は?
今夏はリーズに残ることになるのか、それとも新天地を求めて旅立つのか。井手口の決断に注目が集まる 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】
また、井手口がプレシーズンマッチで不慣れな右MFとして起用されたことにも「ビエルサ監督は、全選手に最低でも2つのポジションをやらせている。例えば、セントラルMFの選手がセンターバックとしてプレーすることもあり、井手口だけに限ったことではない」と言及し、戦術面で順応していくことも、ビエルサ監督の下でプレーするなら大事なポイントになると語った。
その井手口は、8月13日に行われたU−23チームの試合で先発フル出場。1アシストを記録し、2−1の勝利に貢献した。指揮官が考えるファーストチームのスカッドは現在22名で構成されているが、例えばけが人が出たり、井手口がU−23で活躍し続けたりすれば、今後序列が変わってくる可能性はある。しかもイングランド2部は、プレミアリーグの38試合よりも多い、合計46試合の長丁場だ。
選手補強に関して、移籍市場が閉まったイングランドだが、選手の売却やレンタル移籍の市場は31日まで開いている。
現在イングランド2部所属とはいえ、井手口が在籍するリーズは3度の国内リーグ制覇を誇り、2000−01シーズンにはチャンピオンズリーグにも出場した名門。約4万人を収容する本拠地エランド・ロードもサポーターの熱気がダイレクトで伝わり、最高の雰囲気に包まれる。しかも、監督は智将・ビエルサだ。
一方、U−23の試合には出場しているが、プロ選手ならトップチームの試合に出てこそ大きく成長するのも事実。新天地を求める選択肢も間違ってはいないだろう。ビエルサ監督も井手口の残留はまだ決まっていないと話している。
はたして、今月末までに井手口はどんな決断を下すのか。注目が集まっている。