名門・四中工が味わった「インハイの裏」 期待の2年生トリオが雪辱を誓う
地元開催のインターハイ準々決勝を観戦する、四中工期待の2年生トリオ(左から田口、森、和田) 【安藤隆人】
東山vs.三浦学苑の一戦を真剣なまなざしで見つめる3人の胸には「四中工」の刺しゅうが刻まれていた。言わずと知れた三重の名門・四日市中央工業。地元開催のインターハイに、彼らは出場していない。
開催地ゆえに今年の三重代表は2校だった。だが、四中工は初戦となる三重県予選ブロック予選2回戦で伊賀白鳳に1−1のPK負け(4−5)。決勝リーグにすらたどり着けず、早々に名門の夏は幕を閉じた。
屈辱の夏を過ごす名門・四中工
屈辱の夏を過ごしている彼ら。スタンドで自分たちのいないインターハイを見つめていた3人はFW田口裕也、森夢真、MF和田彩起。共に2年生でJクラブのスカウトも注目する、四中工期待のトリオだ。
彼らの目には地元開催のインターハイはどう映ったのか。
「本来なら自分たちが出なければいけないのに、出られていないということが屈辱的で、本当に悔しいです」
こう語ったのは、ずば抜けたスピードを持ち、右サイドハーフとしてドリブルと正確なクロスでチャンスを作り出すアタッカーの和田だ。伊賀白鳳戦ではPKのビッグチャンスをつかんだが、放ったキックはゴールに結びつかなかった。
「僕が外してしまったせいで負けてしまった。本当に悔しいし、インターハイを見て、より悔しさが湧いてきた。今はもう選手権に向けてやるしかないと思っています。僕は2年生だけど、ここで『あと1年ある』と思うのではなく、『今年の選手権に行けなかったら終わり』という気持ちでいます。自分のゴールで四中工を選手権に連れていかないといけないし、復活させるために僕ら2年生は死に物狂いでやらないといけないと思います」
もし自分がPKを決めていたら……。後悔の念は強い。だからこそ、自分から甘えを捨てたい。それは田口も森も一緒だった。
意識と行動力に課題を感じるFW田口
こう語る田口は、177センチの高さでポストプレーと裏への抜け出しに秀でており、前線で起点となるだけでなく、巧みな配球でリズムを作り出せる存在だ。ポテンシャルは非常に高く、ハマれば前線で器用さを発揮して攻撃の潤滑油となる。だが、チームはまだ田口の持つ能力を十分に引き出せておらず、プレーの連続性で課題を残している。
「インハイ予選の後にA2チームに落とされて、いろいろ考えました。『三重開催だからこそ絶対に(インターハイに)出たい』と口では言っていたけれど、肝心の行動が変わっていなかった。何か自分の中で変えないといけないという意識が生まれて、苦手な走りのメニューでも設定された時間内に入れないことはまだあるのですが、最後まで全力で走り切るようにしています。
正直、これまではしんどくなったら『もういいかな』と思って、最後はただ走っているだけだった。でも、それが本当に自分の甘さだった。走れないにしてもいけるところまで全力で走り抜く。キツくても走り切る。これを変えました。実際にインターハイを見て、(インターハイに)出るチームはやっぱり走り切ることをおろそかにしていない。僕らが一発勝負に弱いのは、こういう部分をおろそかにしてしまっていたからだと、あらためて感じました」(田口)