ルイス・エンリケに代表で期待されること ポゼッション至上主義からの脱却なるか
ルイス・エンリケに期待される仕事は?
ルイス・エンリケの就任会見の様子。期待される仕事は今までのスタイルの順守ではない 【写真:ロイター/アフロ】
近年のスペインのプレースタイルはポゼッション至上主義と形容できるものだ。多くのMFを起用して中盤に数的優位を作り出し、グラウンダーのショートパスを多用しながら、2列目、3列目からの攻め上がりでライバルの守備組織に生じたスペースを突いていく。そのために必要なのは、相手守備陣を混乱させるための選手であり、前線に張り出すストライカーは1人いれば十分だった。
ルイス・アラゴネスが確立したこのプレースタイルはこの国のフットボールのアイデンティティーとなり、後任のビセンテ・デル・ボスケとフレン・ロペテギの下でもしっかり受け継がれてきた。だが、ルイス・エンリケに期待されている仕事は、12年以上も続いてきたポゼッション至上主義を、ただ順守することではない。
圧倒的なゲーム支配を見せるも、スコアは接戦に
10年のW杯南アフリカ大会を制したスペインだが、スコア上は接戦の試合が多かった 【写真:ロイター/アフロ】
10年のW杯南アフリカ大会もそうだった。最終的には優勝したものの、スイスとのグループリーグ初戦ではボール支配率で圧倒しながら1ゴールも奪えず、0−1で敗れている。スイスにはロシア大会直前の親善試合でも苦戦を強いられ、1−1で引き分けた。今思えば、それはスペインがロシアの地で直面する障害を知らせる警笛だったのだ。
スペインが置かれている現状は、ルイス・エンリケがヘラルド・マルティーノの後任に就いた14−15シーズン当初のバルセロナによく似ている。
08年から12年にかけてチームを率いたジョゼップ・グアルディオラの指揮下で、バルセロナのフットボールは世界中を虜(とりこ)にした。だがグアルディオラが去り、後任のティト・ビラノバも病に倒れる中で、徐々にチームは輝きを失いはじめる。選手たちは心身に疲労を溜め込み、創造性にあふれる連係プレーや前線からのプレッシングは、以前ほど機能しなくなっていった。