今、一番ホットな高校生バレーボーラー 水町泰杜を突き動かす純粋な思い
全日本ユース男子に名を連ねた水町 【月刊バレーボール】
同年代を代表するスパイカーが持つ葛藤と意欲
昨シーズンは1年生ながら、エース兼主将の鍬田憲伸(中央大1年)と2枚看板を形成し、インターハイと全国高等学校選手権大会(春高バレー)の高校2冠に貢献した。「スーパールーキー」として名を馳せ、学年が1つ上がった今シーズンは、ゲームキャプテンを務める。高校バレーボール界きっての逸材だ。
その彼が常に口にする言葉がある。それは、「この身長で、どうやって点を取るか」というもの。現在、水町の身長は181センチ。一般的に低くはないが、バレーボールの世界では高校生世代でも大型化の傾向にあるのも確かで、コート上で対峙(たいじ)する相手と10センチ以上離れていることもある。今年5月には第67回黒鷲旗全日本男女選抜バレーボール大会(黒鷲旗)でVリーグのチームと対戦する機会があった。その時にJTサンダーズの小野寺太志(201センチ)と向かいあった際には、「手が長い!」と目を丸くした。
加えて、スパイカーとして強い存在感を放つほど、相手のマークは厳しいものになっている。だが、そうしたシチュエーションにこそ、水町は胸が躍るのだ。
「3枚ブロックがつくことにも、けっこう慣れましたしね。黒鷲旗も、大人たちが容赦なくきました(笑)。
ただ、ああいった大きい選手を相手に、どうやって点を取るか。フェイントでも、1点は1点ですから。まだまだ攻撃の『引き出し』を増やしていきたいですね!」
「自分がやられたら嫌なことをやりたい」
今年5月の黒鷲旗では、Vリーガーを相手に奮闘した 【月刊バレーボール】
弾けるような動きと、多彩な攻撃はすでにこのころから備わっており、JOC杯の決勝では、高さで勝る東京都選抜を翻弄(ほんろう)する姿が印象的だった。
その後、全日本中学生選抜の海外遠征メンバーとして、オーストラリアへ。現地ではU−15の同世代と、U−17の年上のチームと試合を重ねた。U−17チームには身長2メートルを越える選手がズラリ。中でも、最高で212センチの選手がいた。その相手に、水町はときにスピードのギアを上げ、ステップにフェイントを織り交ぜ、得点を重ねた。見上げるほどに高いブロックが立ちはだかろうとも、難なく攻略してみせたのである。
JOC杯やオーストラリア遠征で見せたステップワークについて、水町はこう語る。
「こっちが時間差を仕掛けてくるとなったら、相手もガチガチになるもの。その時に、緩急をつけて、フェイントを入れたら、捕まえられない。というのも、自分がやられたら嫌だな、ということをやりたいと思っているんです。そこでフェイントくるかって思う時もありますし、逆にそれをすれば決まる、ということもあるので」
そうした動きを、彼は日ごろからイメージしている。練習で試してみて、うまく成功すれば、その感覚を忘れないように、試合本番で繰り出すというのだ。
2017年末の天皇杯ファイナルラウンドの近畿大戦では、センターエリアからライト方面に素早く移動してスパイクを打ち込む、いわゆるミドルブロッカーのブロード攻撃に近いプレーで得点。試合後には、「公式戦でやったのは初めてです!」と、うれしそうに笑った。