「発想の転換」で流れを変えた錦織圭 自身初のウィンブルドン8強入り

内田暁

錦織、ジョコビッチ戦へ「これまでとは違った戦いになるはず」

準々決勝の相手はジョコビッチ。新たな一歩へ向けて、錦織は気を引き締めた 【写真:Shutterstock/アフロ】

 第2セットを落とした時点で心に刺さった未練は、第3セットにも響く。スコアだけを見れば第3セットも、互いにサービスゲームをキープする第2セット同様の展開。だが4度のブレークチャンスが示すように、主導権は常に錦織の手に渡っていた。タイブレークも優勢に進める錦織が、5−2と大きくリードした。

 だがここで芝に足を滑らせ転倒したガルビスが、膝の治療のためにコートを離れる。この中断は、明らかに錦織の集中力を途切れさせた。再開後にエースを許すと、ダブルフォルトでポイントを献上。その後は互いに、背水の陣となる一進一退の攻防を繰り返した後、ついに錦織が4本目のセットポイントをモノにした。膝に大きな不安を抱えるガルビスは、第3セットを落とした時点で、勝機が去ったことを悟っただろう。第4セットは錦織が終始圧倒し、ウィンブルドンでは初となるベスト8への扉を開く。「奇妙な試合」の行方を決したものとは、錦織の「特筆すべき精神力の強さ」だと、ジョコビッチは明言した。

 ウィンブルドンのベスト8は「一つのゴール。なかなかこの壁を破れなかったのでうれしい」と言う錦織は、その言葉とは裏腹に、さほど表情をほころばせることもなく続けた。

「まだまだ優勝するためには、ここからタフな戦いが続く」

 今の彼は、優勝をも視野に入れはじめている。その前にそびえる大きな壁こそが、ジョコビッチ。
 不戦敗を除いても12連敗中の相手ではあるが、「芝での対戦は初めてなので、これまでとは違った戦いになるはず」と誓いを新たに、さらなる未踏の高みを目指す。

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著者プロフィール

テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。京都在住。

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