「発想の転換」で流れを変えた錦織圭 自身初のウィンブルドン8強入り
“ジョコビッチ少年”が苦戦した天才選手と対戦
3時間半におよんだ激闘を制した錦織圭。ウィンブルドンでは自身初となるベスト8に進出した 【写真:Shutterstock/アフロ】
「奇妙な試合」というジョコビッチの言葉を読み解けば、それはこの試合がどちらに転んでも不思議ではなく、大勢を入れ替える幾つかのターニングポイントがあったことを示している。
ウィンブルドン4回戦に勝ち上がった現在138位のガルビスは、ジョコビッチにしてみれば同じアカデミーで汗を流し、しのぎを削ったかつてのライバルだ。恵まれた体躯(たいく)から放つショットを個性的な才能で操る天才肌なこの選手に、少年時代のジョコビッチはめったに勝てなかったという。
その実力をガルビスは、試合立ち上がりから存分に発揮した。特に錦織が手を焼いたのが、本来なら最も得意とするサーブリターンだ。コーナーに打ち分けられるガルビスのサーブは、スピードもさることながら、彼固有の回転や変化を見せる。コースを読むのが難しく、また読めてもクリーンに捉えきれず、錦織は攻略の糸口すら見いだせない。肘に覚えた痛みの影響もあってか、第1セットはガルビスのサービスゲームで2ポイントしか取れずに失った。
劣勢の展開 耐えて見つけた攻略の糸口
193センチの長身選手ガルビス。ネット前へのドロップショットを絡めるなど、錦織を翻弄した 【写真:Shutterstock/アフロ】
「これだけリターンに苦労しているのだから、前に入って打ってみよう」
窮地に追い込まれ、自らを鼓舞したこの勇気が、ガルビスに圧力を掛ける。相手の心の内に芽生えたミスへの恐れを見抜いたか、攻勢に出た錦織が苦しみながらも第2セットを奪い去った。
このタイブレークの結末が、傍目(はため)には最初の大きなターニングポイントに映る。だがガルビスが真に悔いたのは、第2セット序盤のブレークの機を逃したことだった。錦織が肘の痛みに苦しんでいるだろうことは、ガルビスにも見えていた。だからこそ「第2セット序盤でブレークができていれば、試合は全く違う展開になっていたはず。圭はあるいは、棄権を考えたかもしれない」と試合後にガルビスは振り返る。
「リターンゲームで、もっと攻撃的にいくべきだった。それができないでいる間に、圭は自信を取り戻してしまった」