高橋大輔「フィギュアという軸が必要」 現役復帰会見 一問一答
高橋大輔が現役復帰を表明。「さっぱりとした気持ちで次に向かえていなかった」と決断に至った理由を語った 【写真:坂本清】
高橋は現役復帰を果たすにあたり、当面の目標を12月の全日本選手権に設定。平昌五輪金メダリストの羽生結弦(ANA)や、銀メダリストの宇野昌磨(トヨタ自動車)に「勝てる気は一切しない」と言いつつ、「全日本選手権の最終グループに入って、彼らと一緒に6分間練習や公式練習をしたい」と希望を語った。
さっぱりとした気持ちで次に向かえていなかった
現役に戻りたいと最終的に決断したのは、昨年の全日本選手権の後です。引退してから4年間、ニューヨークに行ったり、テレビのお仕事をさせてもらったり、いろいろな方にお会いして、第一線でやっている方たちの姿を見ながら、自分の中で「これが本当に自分のやりたいことなのかな」と、そうした思いが徐々に膨れ上がってきました。
全日本選手権で五輪に向けて戦う選手たちの姿や、個人個人がそれぞれの思いや目標を持ってやっている姿を見ました。僕は現役のときに世界を目指して、世界で戦うためにやっていましたけれど、皆が全日本選手権で結果を残すために自分自身を追い込んでやっていく姿に僕自身も感動したというのがありますし、そういう戦い方もありなんじゃないかと思いました。これまでは勝てないんだったら現役をやるべきではないと思っていたのですが、それぞれの思いの中で戦うというのもいいんじゃないかと思いました。
あとはソチ五輪が終わって、世界選手権にけがで出場することができず、そのことが僕自身の中でさっぱりとした気持ちで次に向かえていなかったのかなと、この4年間で思うようになりました。次に進むために現役としてやって、自分の納得する形で次に進まないといけないんじゃないかと。自分自身でもうまくまとめられなくて、決断に至る気持ちは複雑で、皆さんにすべてを理解してもらうのは難しいと思います。
あとはこれからスケートをやっていく上で、何十年も滑り続けていくのはなかなか難しい。すごく良いパフォーマンスができてあと5、6年だろうと思ったときに、自分自身のスケートをもう一度取り戻して、アイスショーだったりで皆さんに失礼のないスケートをしていくためには、現役に復帰して体を作り上げていくくらいじゃないと、そういうスケートはできないんじゃないかと思ったことも理由の1つです。
――全日本選手権が1つのきっかけになったということですが、そこから半年間、決断に至るまで、すんなり決断できたのか。それとも葛藤があったのでしょうか?
決めてからは現役に戻ることだけを考えて過ごしていたので、不安はありますけれど、僕自身はわりとすっきり過ごせていたのかなと思います。五輪や世界選手権を間近で見させてもらって、素晴らしい選手たちの姿は刺激になりましたし、テクニック的な部分でも現在4回転を練習していますが、どう跳んでいるのかを間近で見させてもらって、すごく勉強になりました。3月まではほとんど滑る時間はなかったのですが、4月からは徐々にスタートしていって、今は非常に充実した時間を過ごしています。
――刺激になった選手を具体的に教えてください。
みんな刺激になりました。復帰するにあたって、今の自分としては世界で戦えるレベルまで戻すのは困難だろうとは感じながら過ごしていました。練習をスタートしたときはなかなか体が言うことをきかず、このままやっていけるのかと思ったのですが、徐々に体が仕上がってきたら、もうすぐこういうことやああいうことができると感じながらやっています。戦ううえではジャンプが必要になってくると思うので、そういうところではネイサン・チェン選手(米国)のジャンプは研究しています。
自分だけのためにやっていきたい
一番は、自分にはフィギュアスケートというものが軸にないとダメだなと思ったことです。今後の生活をしていくうえで、しっかりしたものを持っていなければ自分らしく過ごせないなと。そういう意味で自分のスケートを取り戻すことが、気持ちとして突き動かされたというのはあります。上から目線のようになってしまうかもしれませんが、今までは期待に応えたいだったり、そういう中で戦っていたと思います。ただ今回は、誰かのためにというのではなく、自分だけのためにやっていきたいと思っています。
――4回転時代になり、今季は新たにルール改正もありました。このタイミングについてはどう思っていますか?
いや、たまたまそのタイミングが一緒になったというだけです。4分間でジャンプが7本。楽なことはないと思うんですけれど、今までやってきたものと違うので、そういう意味でもフレッシュな気持ちで挑める良いタイミングだったと思います。
――今回、復帰をするに当たって同年代の仲間たちや、指導を受けていた長光(歌子)先生には相談をしたのですか?
報告は(浅田)真央やノブ(織田信成)らみんなにぎりぎりにしました。コーチには現役に戻りたいと思うようになった年末に食事をする機会があって、そこで「現役をやりたいと思うんだよね」と言ったときに、すごく賛成してくれました。相談というよりは報告ですね。自分は「やりたい」と思ったときに、そこしか見えていなかったので、誰かに相談するというのはなかったです。自分の中で決めて、「こうしたい」と話をしました。
――どういうふうに戦っていきたいか、ビジョンを教えてください。
とりあえず戦える位置までいけるかどうかも分からない状態なので、結果をもちろん残したい気持ちはありますけれど、まずは全日本選手権を目指して、近畿ブロック、西日本選手権を通過したいです。
全日本選手権で表彰台は……今の段階では難しいと思いますけれど、練習していく中でもしかしたら見えてくるかもしれないですし、その先にもし何かがあれば、そこを目標にするかもしれないですし、しないかもしれない。それは全日本選手権が終わった後にしっかり考えたいと思います。全日本選手権に向けて、あと6カ月しかないので、その期間で4年間のブランクを埋めるようにしないといけないと思っています。4年間というのは相当なブランクなので、6カ月の間でできることを精いっぱいやりたいと思います。
――最終的にはどういうスケーターになりたいですか?
今の自分は30歳を超えて、フィギュアスケート界ではだいぶ年齢が上で、なかなか成長は難しいと思うのですが、30歳を超えてもこれだけ成長できるという姿を、12月が終わったときに見せられるスケーターにはなっていたいかなと思います。