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全日本女子が今季取り組んできた課題
バックアタックはなぜ使えなかったのか?
ネーションズリーグ日本ラウンドは1勝2敗に終わり、取り組んできたバックアタックも見せることができなかった
ネーションズリーグ日本ラウンドは1勝2敗に終わり、取り組んできたバックアタックも見せることができなかった【写真:坂本清】

 東京五輪まであと2年を切った今、世界と戦う覚悟があるのか――。


 オランダ戦を終えた中田久美監督は涙で言葉を詰まらせた。


「もう1回私たちが目指すべきところ、やらなきゃいけないこと、背負っているもの。しっかりともう一度、選手たちと向き合いたい。私たちがもっとギリギリのところで戦っていかなければ突破できる場所ではない。ただ、諦めるわけにはいかないので、この負けをムダにしないように。全員で戦っていきたいと思います」


 相手にやられるのは仕方ない。ただ、やるべきことをやらないのは不甲斐なく、何より悔しい。ネーションズリーグ日本ラウンドの3戦を1勝2敗で終え、全日本女子は世界と戦う厳しさをあらためて痛感させられ、多くの課題が浮き彫りになった。

今季から「速いバックアタック」に取り組む

古賀(奥)はチーム始動時からバックアタックに取り組んできたことを明かす
古賀(奥)はチーム始動時からバックアタックに取り組んできたことを明かす【写真:坂本清】

 秋には世界選手権を控える今シーズン。4月にチームが始動した時から多くの選手が「速いバックアタックにチャレンジしたい」と口をそろえた。なぜか。理由は明確だ。


 昨シーズンはほとんどバックアタックを使えず、特に前衛2枚時は攻撃が限られ、相手にブロックポイントを献上することも多くあった。その状況を打破し、アタッカーとブロッカーが対峙(たいじ)する際に少しでも数的優位な状況を生み出すには、攻撃枚数を増やし、相手のブロックの動きを遅らせなければならない。


 選手たちもバックアタックの必要性は昨年の試合で実感していた。スピードも重視されるバックアタックは確かに難度も高いが新たなチャレンジに積極的だった、と古賀紗理那は言う。


「私たちにとって必要な攻撃であるのは間違いない。速さを生かすためにはお互いが合わせようとするのではなくて、スパイカーはどんな状況でも同じテンポで入って、『ここに来る』と思って跳ぶ。スパイカーがタイミングを変えるとセッターが迷うので、極端に言えば、同じタイミングで同じように入って合わなかったら『今のはトスが悪かった』と割り切るんです。


 もちろん状況によっては余裕がない時もあるので、少し浮かせてほしい時は要求しますが、基本的にはパスが返った時も、返らなかった時も絶対に同じリズムで入ることだけは徹底し、トスが来ると信じて入る。そういうイメージで取り組んできました」


 練習での感触は上々。だからこそ、より確固たる自信を得るために試合でチャレンジする。強豪国と対戦するネーションズリーグは、まさに絶好の機会だった。

田代「受け身のトス回しになってしまった」

試合では中央の大きな選手を避け、サイドを使うことが多かった
試合では中央の大きな選手を避け、サイドを使うことが多かった【写真:坂本清】

 だが、思惑通りにはいかない。練習ではできたことが、試合になるとできない。その理由を日本ラウンド初戦の米国戦でスタメン出場したセッターの田代佳奈美はこう言う。


「Aパスが入っても海外のチームは真ん中に大きな選手がいるので、サイドに逃げてしまいがちでした。しかも最初の1点をいい形で取れることがほとんどないので、自分自身も受け身のトス回しになってしまった。どんな状況でも使ってみないと使えるか使えないかは分からないわけだから、もっと序盤や中盤で使っていかなければいけなかったし、パスが崩れたことを言い訳にはしたくない。Bパスからでも、もっと先手先手でいろいろな攻撃をしなければいけなかったと思います」


 もちろんセッターだけの問題ではなく、スパイカー側も修正しなければならないことはある。たとえば、セッターにピタリと返るAパス時ならば理想通りの状況で展開できると思っていても、パスを乱され、セッターがアタックラインやアタックライン後方まで動いてトスを上げなければならない場合、スパイカーだけが同じ位置からいつも通りにバックアタックの助走に入ると、セッターとの距離が生じ、必然的にズレが生まれる。


 当然ながらサーブで崩そうとするのが主流なのだから、パスの正確性ばかりにこだわるのではなく、パスが乱れた状況でどう展開するか。たとえば銅メダルを獲得した2012年のロンドン五輪の前年や前々年はそのズレを修正すべく、Bパス以降、セッターが動かされた状況からトスを上げる場合はバックアタックに入るアタッカーもそれに合わせて動き、助走に入る位置を変えていた。加えて前衛2枚時にパスが乱れた場面やセッターが1本目をレシーブし、リベロがトスを上げる際も、相手が「クイックはない」と両サイドにマークを絞った状況であえてバックアタックを使うなど、攻撃枚数を減らさない工夫をしてきた。

田中夕子
神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など、女子アスリートの著書や、前橋育英高校野球部・荒井直樹監督の『当たり前の積み重ねが本物になる』では構成を担当

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