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日本女子、グラチャンで見えた世界との差
課題は山積みも、大きな財産を得る

日本の最終成績は5位

全日本女子の最終成績は5位と、決して満足のいく結果ではなかった
全日本女子の最終成績は5位と、決して満足のいく結果ではなかった【坂本清】

 10日に行なわれたワールドグランドチャンピオンズカップ(以下、グラチャン)、最終戦の中国戦後のミックスゾーン。中田久美監督の目から、涙が溢れた。


「悔しさと、選手たちが本当に頑張ってくれた、という気持ちだけです」


 全日本女子の最終成績は5位。決して満足のいく結果ではなく、特に全勝で優勝を決めた中国との力の差は明らかで、課題も山積みだ。


 だがそれ以上に、得られた手応えがあり、何より、大きな財産を得た大会でもある。


「強豪国を相手にセットを取ったり、競り勝てたのは選手たちの自信につながったと思います。チームが次に進んでいくことを考えると、非常にいい経験をしたと思います」

ベストゲームはブラジル戦

 ベストゲームは大会3日目、8日のブラジル戦だ。


 まず、流れを引き寄せたのがサーブ。事前のデータから、ブラジルに対しては前後に揺さぶるサーブが有効であることを踏まえ、ターゲットの正面ではなく前方に落とすサーブや、コート後方に伸びるサーブを狙う。特に新鍋理沙、冨永こよみのサーブが随所で効果を発揮した。


 2008年の北京、12年のロンドン五輪で頂点に立ったブラジル代表を率いるジョゼ・ギマラエス監督も「今のバレーボールはアグレッシブなサーブが非常に重要。バレーボールにおいて最初のプレーであるのはサーブ。いいサーブを打つことは勝敗を決めるポイントの40%を占めているのではないか」と言うように、試合の主導権を握り、相手の思い通りの展開に持ち込ませないためにはサーブで攻めることが絶対条件でもある。


 サーブが走ればディフェンスも生きる。両サイドやミドル、バックアタックも含めた4枚攻撃を基本とするブラジルの攻撃に対しても、日本のブロックが機能する。荒木絵里香の6本のブロックポイントもさることながら、際立っていたのはブロックタッチだ。


 相手の攻撃に対して荒木、奥村麻依の両ミドルが確実にタッチを取って攻撃につなげる。その結果、ブレークチャンスが何度も生まれ、セッターの冨永がミドルを絡め、レフトに相手のマークを引き寄せたところでブロックが1枚になったライトを使い、得点を重ねた。


 まさに理想通りとも言うべき展開を、中田監督はこう評した。


「東京での2戦(vs.韓国/3−0、vs.ロシア/1−3)はミドルもAクイックやBクイックが多く、レフト側に全体が寄っていました。でも(ブラジル戦では)相手のマークをレフトに寄せておいて、そこからラリー中にもライトを使った。冨永のトス配分がそれまでとは全く違ってライトをうまく使えていたので、相手のブロックも分散した。強いブラジルにフルセットで勝てたことは大きいし、苦手意識は選手も持っていないと思います」


 7月のワールドグランプリに続いて今大会と、ブラジルに連勝したのは30年ぶり。第1セットの序盤で背中を痛め、日本戦では途中交代したブラジルのエース、ガブリエラ・ギマラエスも日本の進化に感嘆した1人だ。


「スピード、ディフェンス、サーブ。日本の優れた部分は私たちも知っていましたが、ブロックタッチもたくさんあって、レシーブだけじゃなかった。まさにアメイジング。驚きました」

米国戦も「苦し紛れのフルセット」

ブラジル戦で荒木(左)が存在感を発揮したことを警戒し、米国のブロックは通常と異なるパターンを見せた
ブラジル戦で荒木(左)が存在感を発揮したことを警戒し、米国のブロックは通常と異なるパターンを見せた【坂本清】

 ブラジル戦の布石は、翌日9日に行なわれた米国戦でも生かされた。


 サイドアウトだけでなくラリー中も含め、昨年までと比べればミドルの打数が大幅に増えたこと、特にブラジル戦では荒木が存在感を発揮したことを警戒し、米国のブロックは通常と異なるパターンを見せた、と荒木が言う。


「米国のブロックは基本的にどんな相手に対しても絶対に真ん中で待って、トスが上がってからバッと動く。でも(日本戦では)自分に対してフロント(※ミドルブロッカーの攻撃のアプローチに対して正面に位置取りをしてから反応・対応するブロックのジャンプ動作の準備)をしてきた。相手にいつもと違う対応をさせたのはすごく良かったし、ブラジル戦が生きたのかな、と思います」


 特に効果を発揮したのは第1セット。荒木の打数や決定本数にかかわらず、ミドルに対する警戒が強まったことで、わずかに移動が遅れたミドルブロッカーとサイドブロッカーの間を抜くスパイクや、未完成のブロックをうまく利用したスパイクで得点を重ねるケースが目立った。ウィングスパイカーの内瀬戸真実も「相手のブロックが割れていたので(攻撃が)うまく決まった」と振り返る。


 だが米国も、いや、世界のトップはそのままでは終わらない。


 ブラジル戦の日本と同様、米国も前後に揺さぶる強弱をつけたサーブで応戦し、試合序盤にはブロックの間を抜けて決まっていたコースにレシーバーを入れる。なかなか得点が取れない日本に対し、米国はリードブロックで対応。ブロックをかわそうと苦し紛れに放ったフェイントはことごとく相手のチャンスボールになるか、たたき落とされた。


 フルセットでの惜敗、という結果だけでは見えない世界との差。試合後、中田監督はこう言った。


「米国の対応能力に封じ込められるというか、振り回されたという感じで、点数の取り方もいつもストレスがかかっているようなイメージしかない。苦し紛れのフルセットという感じがします。相手が対応してきた時に、さらにその上の上にいくことができないというところは、まだ力不足だと思います」

田中夕子

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など、女子アスリートの著書や、前橋育英高校野球部・荒井直樹監督の『当たり前の積み重ねが本物になる』では構成を担当

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