錦織らしい「攻撃的なフォア」復活に期待 松岡修造が語る全仏テニス見どころ

スポーツナビ

鍵のひとつはサーブの捉え方 キック系の使い方もポイント

――サーブの打ち方も復帰してから変わって、フォアも少し変わっていると思うのですが、松岡さんから見て顕著な変化に見える部分は?

 フォアに関しては、錦織選手が「大事な場面で(理想とするフォアが)できるかどうか。それには時間がかかると」と言っていたとおりですね。
 特に最初のチャレンジャー大会でのフォアなんて、彼の感覚で言うと初心者感覚だったと思います。打ち方が分からなくなって、何をやっても上手くいかない状態。それがだんだんとフィーリングをつかんできた。今も練習中はたぶん上手くいっていると思います。
 ただ彼の良さというのはコートの中に入って、攻撃していく感覚です。考えてはいけない、考えた時点で打てないショット。だからこそ錦織選手しか打てないショットなのですが、そこまで持っていくには、やはり試合でそれをこなして、失敗しながらでも継続するしかないと思います。

 それから、コーチのマイケル・チャンの良さはサーブの捉え方です。彼は現役時代、ファーストサーブとセカンドサーブをどう使っていくかという事に長けていました。だから錦織選手よりも半分くらいの(パワーの)サーブでも世界2位までいったのです。そこを錦織選手に1番学んでほしいところかなと思います。

全仏優勝へはサーブの捉え方、使い方も大事なポイントとなる 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

――サーブをどう使っていくかというのは、配球の内訳などでしょうか?

 ナダルが全仏で優勝した時は、ファーストサーブの9割が入っていました。錦織選手がファーストサーブをクレーで使うときには、7〜8割入れば良いという捉え方がいいと思います。クレーで半分取れれば十分ですから。セカンドサービスを、その分少し強化して。そのプレーをするにはダブルフォルトが少しあったとしても、いつも以上に強打をしていく事だと思います。

 特にクレーコートというのは「ボールが跳ねる」という事が、ものすごく大事な点になってきて、錦織選手が持っているスライス系とスピン系、フラット系とキック系というサーブの中で、特にキックサーブ(※編集部注)をファーストサービスから上手い形で使っていくことが大事だと思います。
※キックサーブは、サーバー(右利き)から見て右側に大きく跳ねるサーブ。

 キックサーブは基本的に相手のバックサイド側に打つものなのですが、真ん中に打つのも効果的なんです。もちろんそういうものも彼は分かっているはずですから、どのようにして混ぜていくかという事だと思います。

――真ん中へのキックサーブが効くというのは?

 レシーバーの立場で話すと、体をめがけてサーブがきたときに、バックで捉える場合は、ボールが自分の外側に逃げていくのでいいのですが、フォア側に打たれるとボールが自分の体に近づいてくる感覚になる。バックでは捉えづらい、追えない感覚です。そうかと言ってフォアで回り込もうとして無理をすると、ラケットの真ん中に当たらないなどのケースが出てきます。そういう意味で効果的なので、やはりうまくミックスして打っていくというのが大事ですね。
 特にファーストサーブにミックスさせて、第3のサーブくらいのスピードで行くといいと思います。いろいろな選手の同様なケースを見ていても、8割方はチャンスボールが返ってくる印象がありますね。

キーワードは「崖っぷち大好き」 苦境が錦織の力に

――いろいろなサーブをうまく使う事で、心理的にも相手に優位に立てるところもありますか?

 そうですね。サービスの上手い人は、確率でずっと考えています。例えばラブサーティの場面で、ここでファーストサーブを入れたら何%の確率で(ポイントを)取れるのかとか。そういう捉え方ができると、そもそも低いパーセンテージの状況だったら、たとえ点を取れなくても、ただ単に確率どおりだっただけと思える。逆にポイントを取れる確率が1番高い場所があれば、そこを狙えば取れると思ったらあまり焦らないのです。
 だけどあまりサーブが得意ではない人というのは、ラブサーティのような劣勢になってくると焦るわけです。「エースを取らないといけない」とか、特別な事をしようとする。そういった事は、マイケルがすごく分かっていると思います。

メンタル面でのキーワードは「崖っぷち大好き」。どんな状況も前向きに受け止められれば、「そのひとつひとつが全部エネルギーになる」と松岡さんは語ってくれた 【スポーツナビ】

――錦織選手の全仏でのキーワードは?

 いつもと感覚は同じで、特にメンタルで今まで以上のものが出てこなかったら、厳しい結果になるかもしれません。だからキーワードとしては、僕が使っている言葉で「崖っぷち大好き」です。
 もしかしたら初戦から、崖に追い詰められるような感覚ばかりだと思います。でも、その状況が大好き、赤土の雨の最悪の状況が大好き、クレーコートが大好きって思えるようなメンタルになってくれたら、そのひとつひとつが全部、錦織選手のエネルギーになります。
 こういうテニスをしてほしいというよりも、追い込まれることが好きな錦織選手であってほしいです。
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