それぞれの今季を象徴したエル・クラシコ 互いの価値を証明した90分のスペクタクル

レアルは攻勢をかけることもできたが……

前半終了間際にバルサはセルジ・ロベルトが退場。しかし、レアルは慎重な姿勢を保ち続けた 【写真:ロイター/アフロ】

 しかし、クラシコではジネディーヌ・ジダン監督が交代策で後手を踏んだ。ハーフタイム直前に生じたセルジ・ロベルトの退場を受け、バルベルデがフィリペ・コウチーニョに代えてネウソン・セメドの投入を余儀なくされることは明らかだった。対するレアル・マドリーは数的優位を生かして攻勢をかけるべく、後半開始からナチョ・フェルナンデスに代えてルーカス・バスケスを右サイドバックに起用する選択肢があった。

 だがジダンは不思議なまでに慎重な姿勢を保ち続け、後半も半ばを過ぎた23分になってようやくルーカスの投入を決断。カゼミーロをセルヒオ・ラモスとラファエル・バランの間に下げて3バックにし、両サイドのルーカスとマルセロを高い位置に上げることでバルセロナを押し込むようになった。

 ゲーム終盤は防戦一方の展開を強いられたバルセロナがレアル・マドリーの猛攻をしのぎきり、かろうじて敗戦を逃れたという印象を残した。エルナンデス・エルナンデス主審の誤審にも恵まれた末に無敗記録を保ったという点でも、今回の引き分けはレアル・マドリーよりバルセロナの側に得るものが多い結果だったと言える。

前評判を裏切らない、世界で最も重要な一戦

イニエスタは最後のクラシコで、後半13分にパウリーニョと交代した 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

 高いインテンシティー(プレー強度)の中で多くのゴールチャンスが生まれ、トップレベルの選手たちが高度なテクニックを披露しながら、ゲームの主導権を奪い合った。すでに優勝争いの決着はついていたものの、今回のクラシコも前評判を裏切らない、世界で最も重要な一戦と言えるものだった。

 バルセロナとレアル・マドリーはそれぞれのスタイルと強みを用い、論争をもたらすプレーに溢れた90分間のスペクタクルを提供してくれた。戦前にはレアル・マドリーの選手たちが花道を作り、リーグ優勝を決めたバルセロナを迎え入れる「パシージョ」を行うべきかどうかも大いに議論された。何より今回のクラシコは今季終了後の退団を表明した偉大なるクラック(名手)、アンドレス・イニエスタのプレーが見られる最後の大一番だった。

 国内の2タイトルを独占したスペイン王者バルセロナと、CLの覇権を握るヨーロッパ王者レアル・マドリー。両者は今回もわれわれの期待を裏切ることなく、世界最高の一戦を通してそれぞれの価値を証明することになった。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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