音速バスケを生み出す富樫勇樹 千葉ジェッツが速攻を武器に2冠目指す

佐々木クリス

数値に表れる富樫のすごさ

【(C)B.LEAGUE】

 今年こそ天皇杯との2冠を目指しチャンピオンシップ(CS)を戦う千葉ジェッツ。彼らの強さに迫ってみる。

 サイズ(身長)がものを言うバスケットボールにおいて、千葉の富樫勇樹は身長167センチとBリーグの中でも最も身長が低い選手の1人だ。しかし初年度であった昨シーズン、大男たちがひしめき合うリングにほど近い地理的重要拠点=ペイントエリアで200得点以上挙げながら3ポイントシュートを90本以上決め、さらに味方に230本以上アシストパスを供給した唯一の選手であった。そして今季は、フル出場だった昨季より10試合も出場が少ないながらもこの記録を繰り返してみせた。もちろん今季もBリーグでただ1人の達成だ。


 一度チームが攻撃に転じれば、目もくらむような速さで駆け上がりリングへ一直線。周りのもの全てを置き去りにするスピードはまさに音速。リング周りに侵入する富樫に気を取られれば、今度は味方へのアリウープをお膳立て……。最後の手段として下がって守ろうものなら3ポイントラインの外側で急停止、即座に長距離砲を射抜いてくる。少年のように無邪気に見えて、相手を出し抜いた後の表情は実に不敵だ。しかしそれはむしろ、「エースとはこうあるべき」という姿だろう。大胆不敵、かつ冷静沈着。タイムアウトでも座ることすらしない無尽蔵のエネルギーをいつ爆発させるか、若くしてすでに日本を代表する勝負師だ。

速攻から挙げる得点はリーグ1

 総合力が高い千葉は、ピック&ロールを起点にしたセットオフェンス以外に堅守からの速攻が最大の持ち味でもある。速攻から挙げる1試合平均13.4得点は他の追随を許さない。さらに得点の内訳を見ていくと、速攻から100得点以上挙げた選手は富樫を含む4人。他には同時に2人以上記録しているチームがないことを考えると、いかに千葉の選手たちが縦横無尽に駆け回っているかが分かるだろう。

 富樫同様、相手チームを震い上がらせているのはCでありながら速攻の先頭を走れる脚力と、リバウンドをもぎ取った直後に自らドリブルで最前線まで持ち込むボールハンドリング能力を持つギャビン・エドワーズ。現代バスケではCが走って初めて真のハイペースが実現できる。両翼にしっかりとしたエンジンを積む千葉の魅力だ。

 昨季プロクラブとして初の天皇杯制覇を成し遂げた千葉。正月に見事連覇を成し遂げ、残る目標はリーグ王者以外にない。最もスポットライトがまぶしく、対戦相手が最も激しくプレッシャーをかけてくる場面で、時にゲームが重たくなることも容易に想像できる。速攻の多い千葉は、シーズンを通じてシュートクロックが4秒を切るという攻撃側の窮地を攻撃全体の8.6%とリーグで2番目に低い頻度でしか経験してきていない。

 理想はあくまでもペースを味方に、接戦にすら持ち込ませないことだろう。しかし、窮地の時こそ千葉がボールを託すのは富樫だ。シュートクロックが残り4秒を切った局面で、今季チーム最多の91回攻撃を託されたチームのジェットエンジンは、その得点効率でも0.901PPP(Points Per Possession)をたたき出し、80回以上の選手ではアルバルク東京の安藤誓哉と2人しか日本人では超えていない数値だ(31節終了時点)。

 クラブ史上いまだかつてない順調な滑空を今季みせてきた千葉。CSではさらなる上昇気流を捕らえ、音速で一気に成層圏まで駆け上がれるか、日本中が注目する。

※注釈のないデータはすべて第27節終了時点のものです。
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