アジア勢きっての長期政権を築くケイロス 「4年前以上」のイランで奇跡を起こすか
タフなグループに入るも、実力は4年前以上
11年4月からイラン代表の指揮を執り続けているポルトガル人のケイロス監督 【Getty Images】
11年4月からイラン代表の指揮を続けるポルトガル人のカルロス・ケイロス監督は、かつてU−20ポルトガル代表を率い、89年と91年のワールドユース(現U−20W杯)を制した。A代表でも91年〜93年、08年〜10年に指揮を執り、10年の南アフリカW杯では母国をベスト16に導いた。さらにレアル・マドリーを率いた経験もあるケイロスは、スペインの『マルカ』紙に対し、今大会の抽選後に「スペインもポルトガルも私にとっては特別」と語っている。
しかし、イランにとって非常にタフなグループであることは、もちろん間違いない。悲願の決勝トーナメント進出を果たすには、モロッコを上回ることはもちろん、少なくとも2強のうち一角を崩す必要がある。4年前のブラジルW杯では初戦でナイジェリアと引き分けた後、アルゼンチン戦では後半アディショナルタイムにリオネル・メッシの一撃に沈み、ボスニア・ヘルツェゴビナには内容で善戦しながら、終盤に突き放されて結局1−3で敗れた。
そのブラジルW杯を経験したカリム・アンサリファルド(オリンピアコス)、アシュカン・デヤガ(ノッティンガム)といった主力メンバーに、今回はサルダル・アズムン(ルビン・カザン)、メフディ・タレミ(アル・ガラファ)といった若いタレントが加わった。選手の質も量も、4年前から大きく上積みされている。
W杯でカギを握るのは2つのカウンター
23歳の若さでイラン代表のエースストライカーになったアズムン 【Getty Images】
コンパクトで組織的な守備をベースに、ボールをつなぐところはつなぎながら、いかに効果的なカウンターを繰り出せるか。これが本大会での躍進のカギになりそうだ。カウンターも、大きく分けて2つ種類がある。ボールを奪ってから素早く数本のパスを縦につないでアタッカーがドリブルで仕掛ける形と、ディフェンスラインやGKアリレザ・ベイランバンド(ペルセポリス)から、前線のアズムンや俊足ウィンガーのアリレザ・ジャハンバフシュ(AZ)が一気にスペースや相手DFの裏に飛び出す形だ。
基本布陣となる「4−2−3−1」もボールを正確につなぐことを前提に置いており、素早く縦にボールを運んで、右のジャハンバフシュ、左のタレミがサイドからチャンスを作り、ゴール前でアズムンが合わせるという形がベースになる。そこにアンサリファルドやデヤガが中央でアクセントを加える。
攻撃に応じて全体のラインも押し上げるが、攻守のバランスを崩さずに攻撃陣のサポートをしていくはずだ。そしてボールを失えば、タイトにプレッシャーをかけ、縦にボールを運ばれればラインを下げながら対処していく。ディフェンスリーダーのジャラル・ホセイニ(ペルセポリス)とセンターバック(CB)を組むのは、人に強く機動力も高いモルテザ・プーラリガンジ(アル・サッド)。左右のサイドバックは、攻守のバランス感覚に優れたエハサン・ハイサフィ(オリンピアコス)と、守備のデュエルに強いラミン・レザイアン(オーステンデ)が形成し、このバックラインで背後への突破を阻止する。
戦術面で生命線になるのは、21歳の長身MFサイード・エザトラヒ(アムカル・ペルム)と、アリ・カリミ(セパハン)がファーストセットとなる2ボランチだ。彼らが攻守のハンドルを握り、速攻を狙うのか、自陣でボールを落ちつかせるのかを判断していく。ディフェンスでも彼らのプレーを見れば、積極的にボールを奪いにいくのか、ボール保持者の縦を切っていくのかといった基準が分かる。